VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
昨日、鎌倉は小町通、鬼頭天薫堂にて「由比が浜」と銘打たれた香を買ってきた。
如星は「香り物」が結構好きな部類だ。サンタ・マリア・ノヴェッラのルームフレグランスは良く焚いているし、クローゼットにもスパイス系のポプリを入れていたり。身に着けるほうはささやかなモノだけど、同じくS.M.N.のものや、去年ヴェネツィアで購入した伝統レシピのものなど、やはりイタリア系のちょっと複雑な、あまり日本人が漂わせていないような香りを好んでいる。ま、そもそも香り物に転んだ所以が、S.M.N.のフィレンツェ本店に漂っていた強烈なポプリの香りだったのだから当然かも:)
とは言え、例えばフレグランスから石鹸に至るまで好みの「サンダーロ」、これ日本語に訳せば「白檀」である。日本でも「お香」として馴染みの深いアレだ。もちろん、成分を抽出してオイルから香らせる西欧系と、香木を中心として文字通り焚き上げて香らせる東洋系では雰囲気はかなり違うのだが、それでも根の部分は一緒。煙と共に漂う香りは「抹香臭い」といわれる事もあるけれど、如星はその燻したような線香独特の味わいも好きなのである。イタリア系で好むスパイスやサンダーロ系はかなり甘みが強い香りなのだけど、これを香にするとその煙の部分が甘さを引き締めてくれるというか。東西分け隔てなく愛しているというわけだ(笑)。
最近「お香」というとアロマブームの影響もあって、「マリンノート」のような香りの線香も結構出ているのだけど、正直何処で嗅いでも合成臭くて気持ち悪い。「インセンス」にする技術とそれらの香りが本質的に合わないってのもあるだろうし、またその手の香りは如星が呼ぶところの「マツキヨの香り」めいているからってのもあるんだろうけどね。安売りされてるブランド香水を頭から引っ被ったかと思うぐらいまぶして街を歩く若い男のせいで、本来いい香りなんだろうがイメージが歪められているというか(苦笑)。
そんなわけで、今回買った「由比が浜」も、中身は白檀。今までそこらで適当に「白檀」と銘打たれた香を買って焚いていたけれど、今回一応「それなり」の香を焚いてみたところ、その煙くなさに驚いた。いや、その燻した香りとしての存在は十分健在なのだけど、閉め切った部屋で焚いていても煙の嫌な部分を感じることがまったくない。反面少々全体の香り自体が弱く感じる面もあるけれど、これは結構当たりを引いたのかも。アロマランプ版「サンダーロ」と同じぐらい出番が増えそうな一品でした。嗚呼、香り物万歳。
今日の一滴="−−−−" (2005/05/01)
ぶどうさんのお招きを受けて、氏が外部からオープンに携わった「アサヒアネックス」@浅草の「ハーモニック」のオープニングへ。何処でもそうだけど、オープン間際の追い込みは大変だった模様で、とりあえずお疲れ様の一杯を:)
ここはさすがはアサヒ直営ということで、ここでしか飲めない限定醸造のビールがいくつか。基本的に日本のビールは好きじゃない如星だけど、「そんな人にこそ飲ませたい」と醸造担当のおっちゃんが薦めてくれたという「ヴァイツェン」を試してみる。小麦も使ってるとのことで、確かにベルギーのホワイトビール、ヒューガルデンのような果実っぽさが漂う。飲み口もヒューガルデンほど淡雪めいてはいないけど、フルーツの香りにふさわしい軽さ。驚きだったのが、それでいて「日本のビール」を断固主張する味と喉越しも混在していたところ。元々如星が日本のビールを嫌うのは、それが生のコーンスターチを舐めたような味と臭いがするからで、それが日本ビールの特徴かとも思っていた。が、そのコーンスターチ臭がなくても、日本風味をしっかりと、しかも美味しく主張できるということが今日はじめて分かった。……いや、旨いよこれ:) 正直、混ぜ物のない日本ビール(ヱビス等)も旨いと思ったことはなかったのだけど、これは製法の勝利ってやつだろうか。
聞けば、このビールはドイツで昨年行われたヴァイスビールコンペで金賞を取った代物だとか。「日本人だけに受けたわけではない」という辺りがポイントだったのかも。……ただ、惜しむらくはその点がメニューの何処にも記載されてないし、店内でも宣伝されておらず、そしてウェイターが解説してくれるわけでもないというところ(ウェブ上では説明があったけど、客が皆ウェブを端まで見てからくるわけでもあるまい)。今回は内情に通じてるぶどうさんが同席していたから頼めたというわけで、その辺は「もったいない」ところだ。これについては別件も交えて後述。
この店、アサヒ直営ビルの「メインダイニング」を司るということもあり、プライスレンジこそ高くはないけど、内装も料理もかなり気合が入ってるし、逆に言えば相応のレベルを求められてもいる(と、思う)。 料理面については、今回野菜中心のコースを頂いたのだけど、かなり安心して任せられるレベルだった。フレンチ系ではあるけれど、メインの茄子を主にベーコンを使った皿などにビールへの意識も見えて店とのマッチングもできてたし、また最後の「赤ピーマンのプリン」には正直脱帽だった。ウマウマ。
しかしサービス面でいうと、やはり初日ということもあってか、かなり硬さが目立った。ま、ぶどうさんや相方とはこの辺の話題で盛り上がれるわけで、ぶどうさんがスタッフに顔が通ってることもあって、逆に一言指摘してあげる等、少々外道な楽しみ方もできてしまい(笑)不愉快さはなかったのだけどね。 とはいえ、にしても、今日の対応が単に初日が故の硬さのためなのか、サービスの質にまで思いが至っていないのか、ってのは大きな違いだし、今後のこの店を占うポイントになると思う。前述の「狙っているレベル」で言えば、例えば同価格帯にはサービスレベルが一段図抜けてる「キハチ」辺りがあるわけだし、また店自体「オーダーメイド要求を歓迎」すると謳っている以上、それをキッチンだけでなくフロアの人間がサポートできなければ意味がない。フロアに求められているレベルは決して低くないと思う。……さて、どっちに転ぶのかな。
以下覚えている限りを列記。……な、なんか結構あるな。まるで姑のようだ!(笑) 今回はチェックモードに入ってたってだけで、普段からそんな重箱の隅をほじくり返してるわけではないので念のため。(ま、この辺の線はクリアしてくれてる店を愛用してるというツッコミもありんすがね……)
席に案内される際、楕円形の店内の一段高い外周に上がるので、通路をゆるく斜めに横切る形で段差がある。足元も暗く微妙に斜めなので結構気をつけてないと(特にヒールの女性とか)危ないのだが、そこに差し掛かっても先導するウェイターから一言もない。うーん。その後テーブルから眺めてると、キチンと言うスタッフもいたようだけど……。
飲み屋の系譜も引いてるからか、おしぼりが最初に渡される。でもこういう店なんだから、手近な客から渡すんじゃなくて、女性から渡すのが筋ではないかなぁ……。
ちなみに濡れたおしぼり、テーブル上は綺麗なクロスが掛かっている訳で、そのまま置くのは一瞬躊躇われる。いやもう置くしかないんだけど、それこそおしぼり台でも欲しいところ。またビールのグラスが見事にクロスに輪染みを作っていたり、なんかその辺りテーブルクロスの実運用が回ってない感じ。
前述したようにかなり面白いビールを置いてるのに、その説明が何処にもない。メニューもそっけない名称だけで、何がなにやらさっぱり。メニューを持ってきたウェイターが軽く説明していくんでも良いと思うが……。これはモノが良いだけにもったいない。
パンが結構硬い……のはまぁ良いとして、卓上にオリーブオイルの小ビンがあり、バターが出てこないってことはオイルをつけて食えということなんだろう。が、まず卓上のビンが何なのかすら説明がなく、薄暗い店内では何が入ってるかもわからない。こっちがオリーブオイルで食わせる店もあると知ってたから察することができたのだが。 あとオイルをつけて食う割にパンネの皿が普通で、しょうゆ皿ならぬオイル皿というか、深めの小皿などあると良かったんだけどなー。
今回は事前にぶどうさんからお任せを頼んでおいたので、我々はフードメニューを見ておらず、何が来るのかはわからない。さて突き出しキター。これが何だか判らぬままウェイター去ッター!(笑) おいおい、今時もっと安い店でもプレートの説明ぐらいしてくもんだが、皿を置いたらすぐ踵を返す感じで、如星がよく言う「残心」が全然見えない。ま、この落ち着きのなさは、それこそ初日だからかもしれないけどさ。
なかなかに綺麗にデザインされたアンティパスト登場。で、全員の皿が「同じ」向き。……キッチンにこの皿の「顔」はどっちか聞いてきたまえ。シェフ泣いちゃうぞ。
空のグラスを通路寄りに置いてるんだから、キチンと見つけて「お飲み物は如何いたしましょうか」の一言がホスィ……。
スパークリングウォーター頼んでボトルとグラスを持ってきてもらった時、最初の一杯を注いでくれない店に久々に出会った。つーかメイドカフェだって注いでくれるのに……
全体的に、フロアに目を配ってる人間が消える瞬間が結構多い。これは「指揮官の不在」でもあるな。フロアを回る人間だけじゃなくて、常に店内に目を配り、人をディスパッチする存在がいるとだいぶ違うのだが……。ちなみに「バイトを多用してるのに動きが良い店」は大抵この指揮官制度(?)を使ってる。3人を5人分動かせるなら、一人指揮官を置いてもトータルコストは安くすらなる。ま、これも初日でキリキリ回ってたという点は十分理解してるけどね。
当然テーブルチェックなのだけど、来る伝票が「プラのクリップボード留め」。いかにもレジ会計に持っていきそうなタイプだし、少々安っぽい。こういう店ならブックに挟んで持ってくるタイプ(正式にはアレなんていうのかな)の方が向いてると思うけどなー。
繰り返しにもなるけど、初日だって点は8割ぐらい割り引いてあげていい事を改めて付記。とにかく料理面で安心できるってのは強いし、前述したようにビール好きは一度足を運んで損のない店でした。ま、ビールはこのフロアだけでなく、下のフロア等でも出るみたいだけどね。
今日の一滴="モルト:余市12年シングルカスク「Peaty & Salty」" (2005/05/03)