VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 04月下旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2005-04-21-木】

人生の経験値一考 “Know Me!”

○×で自分の経験リストを開示する「人生の経験値」があちこちの日記で貼られている。最初はまぁ良くあるチェック系の「一日分エントリー埋め」として適当に眺めてたんだけど、そのうち結構近しい人が「経験値」を公開しても、いつの間にか完全にスルーするようになっていた自分に気がついた。別にチェック系開示や100の質問(100質)は嫌いじゃないだけに、この感じる違和感は何なのだろう。……いや、単にネタとしてつまんないからというとそこで話が終わってしまうので(笑)、もう少し考えてみた。

「人生の経験値」は「共通のテンプレ化された質問に答え、自分の情報とネタを開示する」形式のエントリだ。良くある「オタク度チェック」や「恋愛偏差値」、あるいは「〜への100の質問」なんかと同類のネタと言える。この手のエントリは、「経験値」のはてなキーワードでも触れられているように、基本的には「書けばお手軽な一日分のネタになる」というのが基本的な書き手のモチベーションだろう。あまりそこに深い意味を載せてる人は少なかろうと思う(100の質問は、一日分のネタというよりプロフィール代わりにしてる人も多いけど、お手軽という点では似ている)

で、これらのエントリのもう一つ共通項として、少なかれ「私を知って!」という面も持ってると思う。ま、これらエントリに限らず、多少なりとも「私(の思想)を知って!」と思わない人間はウェブ日記やらblogやらなんぞ書かないと思うので、そりゃ当たり前のことだ。ただ一方で、いわゆる「朝飯日記」が軽く扱われるように、あまりに「私」のことしか書いてない文章は、書き手によっぽど思い入れがない限り読んでいてもつまらない。ある程度はネタになってて欲しいわけだ。その点、チェック系は結果と自分(の思い)とのフィット&ギャップをネタにして一発打てるし、100質はそもそも回答が自由記述。いずれもあまりネタを作ろうと意識せずとも、本人の個性が表れた文章が展開できる。まさにお手軽なネタ生成なのだ。

一方で「人生の経験値」がよく見るチェック系等のエントリと異なるのは、第一にチェック系や100質の多くは「テーマ」が定められているのに対し、経験値は広範な日常そのものを扱っている点。第二に○×形式で答える過程のみの提示であり、書き手がコメントを加えたりネタを派生させたりという余地があまりない点だと思う(せいぜい回答一つずつに対する一行コメント程度)。 この話をIRCでしていた一級ネタ師の某A氏が「100質はテンプレの上に上に個人が積み上げていくけど、経験値は○×として小さく小さく必要以上に抽象化しちゃう」と言っていたが、なかなか言い得て妙だと思う。前述の二点の結果、テーマも無く全般に拡散した「私の属性」は「Please Know Me!」という傾向が強いにも関わらず、書き手個人が派生させた読み物的なネタは生まれにくいし、逆に補足も少ないため人格を誤解させかねない形で提示されていることになる。

決して、○×自体が没個性的だとか、私々した文章が鬱陶しいとか言っているのではない。上でも書いたように、如星もチェック系等のエントリーを見るのは好きだし、そもそもWeb日記やらblogには本質的に「他人の日記をのぞき見る」という側面があるわけで、私々した文章も密かに歓迎されてたりするだろう。純粋に今回の場合、対価が少ない(ネタ度・個性、読み応えが少ない)にも関わらず、露出エリアが広範かつ誤解されやすいという「コスト」を軽々と払っている人々がかなり目についたので、違和感というか、正直他人事ながらドキドキしてしまったというわけである。「経験値」公開が暴露ネタで悪趣味だから辞めろとか、そういう観点ではないので悪しからず。面白いって人もいるだろうし、何を公開しようと俺/あんたの自由、素晴らしき哉イソターネッツ。

今日の一滴="−−−−" (2005/04/21)

【2005-04-26-火】

犬語のように吸うがいい!

この2ヶ月に読んだ小説や漫画などの書評でも書こう書こうと思ってるんだけどなかなか腰を据えて時間が取れず。通勤中に座れたりすれば、一番集中できていい時間なんだけどねぇ。……とまぁそんなことを言ってるといつまで経っても日記が書けないので今日は適当な雑感レベル。

如星はあまり音楽を聴くという趣味を持たない人間だけど、通勤電車内で遭遇するお脳の辺りが不自由な方々を遮断したいという誠に後向きな理由で携帯音楽環境を求め(苦笑)、先月頭にiPod miniを購入。ともあれ結果的に飛躍的に音楽を聴く時間が増えたので、何か新しいジャンルはないかと探ってたところ、知人の勧めで聴かされた同人畑声優系の曲がなかなかツボに入ったので手を(耳を?)染めてみた。

正直、同人音楽は数年前の記憶が中心で、「何でもテクノアレンジ」や「巧いわけでもないアニメ声」というあまり良くない印象が強かった。が、最近は同人畑出身で商業ゲーム曲なんかも歌ってる人が結構多いらしい。そんな中で、如星が聴かされたのがriya女史の歌う「ディアノイア」。「最終試験くじら」なるゲームのOP曲らしいが、如星の大変好みな、なかなかに伸びのある歌い上げっぷりに一発で印象が覆されてしまった:) 下手にそこらのテレビから流れ出る、素人カラオケ級の歌い手より全然巧いしね。(なお同人系とか声優系とかいう括りが正しいかどうかは大変不明。その辺のカテゴライズには疎いもんでもーしわけない。)

さておき、本題はちと別のところ。その後ちまちまそっち方面(?)の曲を集めて聴いているのだけど、密閉型イヤホン視聴が主なせいか、次第に「ある音」が気になって気になってしょーがなくなってきてしまった。すなわち「ブレス音」、息継ぎをする時のあの音である。 今まで似たような傾向としては坂本真綾なんかを聴いていたけれど、こうも露骨なブレス音は聴いた事がなかった。多分マイクに音を入れるときのコツなんだろうけど、歌唱力に比べてそういう面での技術は追いついてきてないのかなー、という印象だ。また息を継ぐ個所も、いくらその後が長いとは言え、フレーズの山のてっぺん近くでブチ切られたりすることもしばしば。元ブラス吹きなもんでその辺も結構気になってしまう。すーはー。

この「ブレス音問題」のポイントは、何気なく流してれば大して気にならないのだけど、一度気にしだすと自然と耳が拾いまくってしまうというところである。これってプレゼンでいうドッグ・ワードみたいなもんかな、と類推が進んだ。ちなみにドッグワードというのは「あー」とか「えー」とかいう、いわゆる意味のない台詞のこと。更に一歩進んで、プレゼンやスピーチをしている際に、やたらと「同じドッグワード」を挟みまくってしまう現象のことも指し、これには「要するに」や「つまりですね」なども含まれる。新しく台詞を紡ぐたびに「要するに」がついちゃうとか、意識的に消すように努力しないと誰しも自然についてしまうクセのことなのだ。 もちろんブレス音とドッグワードじゃ発生する原因は違うけど、それらがもたらす結果は似たようなもんだな、と。ドッグワードも気づかない内は全然流していられるのだけど、一度「発見」してしまうとその後気になって気になって仕方なくなるのである(苦笑)。本来気にして欲しい本題(歌とかプレゼン内容)から聞き手の注意が思い切り逸れてしまうわけだ。うーん。

そんなわけで、曲のトーンに没入している最中に、不意に意識レベルが上がって苦笑してしまうという日々を過ごしているのでありました。それもまた、味といえば味なんだけどね。……えーと、オチがないな。ちなみにドッグワードについては、一度誰かに聞いてもらって指摘を受けておくと、グッと巧い「スピーカー」になれますよ、というのを強引に付記しておこう。やっぱりオチなし。

今日の一滴="−−−−" (2005/04/26)

【2005-04-29-金】

おまかせ。

昨日は久しぶりにStonefree@横浜へ。久しぶりじゃない時がないのではという指摘もあるが(苦笑)、まぁなかなかゆっくりと腰を落ち着けて酒を飲める時というのは確かに少ない。それにStoneは馴染みになっていて気楽に寛げ、かつ酒もチーズもその他フードもレベルが高い店なので、逆にゆっくりできない時は勿体無くて行けない気分が働いてしまうことも。

やっぱりストーンがツボにはまるポイントは、モノが良いだけではなく、リコメンドが巧いってところにある。状況と気分に合わせてカクテルを振る、酒を選ぶ、その時状態の良いチーズと酒の組み合わせを提案する、等々。 ま、そもそもバーカウンターというのは「そういうもの」ではある。それが「敷居が高い」と思わせてしまう面もあるらしいけど、基本相手(バーテンさん)にある程度任せてしまうのだから、本来はとても「楽」なスタイルなのだ。例えばバーでカクテルを飲もうとすると、やたらカクテル名を覚えてないといけないと思っている人が結構いる。でも実際問題素人がそんな数を覚えきれるもんでもないし、一方で目の前に「そんな数」を仕上がりの味まで覚えてる人が立っているわけだ:) その意味で言ってしまえば、オンメニューのカクテル(の数)なんてのは飾りです。 カクテルやら酒やらの薀蓄を隣の女性に垂れて得意になりたいなら別かもしれないけど、個人的には目の前に本職がいて、周りにも通がいるかもしれない場でそんな痛い真似をできる根性はすげぇと思う(笑)

ただ、単に「おすすめは?」の一言では相手も困ってしまうだろう。巧い相手ならそこからキチンと会話に繋げてこっちのココロを聞き出しに掛かってはくれるけど、ある程度は最初から「今こんな感じのが飲みたい」という傾向を伝えるのが巧い楽しみ方じゃないかなー。その点で今日印象に残ったのが、カウンターの端に座った結構若いカポーらしき客の女性側。かなりキャピ声(正直ちと頭悪そーな声)の女性なのだけど、しかし漏れ聞こえてきたオーダーは「可愛い感じのカクテルで」「でも甘くはない方が良くて」等々。見た目に似合わず、というと失礼なのだけど、バーというか、バーテンの使い方を巧く心得てるなぁ、と感心してしまった。一方の男性側が「んー、ビール」なんてつまんねー頼み方してるのも聞こえてきてガックリしてしまったが。

まぁ要するに、「こんな感じ」も原酒指定等「小難しい」方向でなくとも、単に「ちょっと急いで来たからさっぱりしたの」とか「さっき食事してきたばかりだから食後酒っぽいの」等の状況を伝えてもいいわけだ。正直「酒はあまり強くないんだけど」と言うのだってアリだ。「強くないけどジュースが飲みたいわけじゃない」と言えば、弱くてもしっかり酒の味のするカクテルでも出してくれるだろう。リコメンドの巧い店/バーテンダーであれば、そっから派生でフードやチーズの合わせもキチンときめてくれるはず(ストーンはこの辺が最強)。もちろん、すっかり原酒飲みになっている如星はモルト等茶色い酒の揃え、こっちの「おこのみ」に応えてくれるレベルも求めているけれど、基本的には「おまかせ」にしっかり応えてくれる店・相手を求めてカウンターを彷徨っているのである。

今日の一滴="ラム:バローズ オル・ダージュ" (2005/04/29)

【2005-04-30-土】

コンフィチュール再び:流石の伝道師

先日微妙な失望をもって書いたコンフィチュール再び。その日の日記にも書いたように、コンフィチュールを日本に持ち込んだとされる「Romi-Unie Confiture」@鎌倉へと足を運んでみた。天気もよかったから鎌倉散歩を兼ねてね:)

小町通りからは線路をはさんだ反対側、雑多なエリアからちょいと離れた辺りに位置するこの店は、しかし連休中ということもあってなんと入場制限中。しかしほんの数分待つだけですぐに中に入れたし、入ってみればわざわざ入場制限を掛けてたのもうなずけた。 まずそもそも店自体がかなり小さく、売り場は四畳半程度なこと。そして何より、店員のお勧めを聞きながらコンフィチュールを選ぶには、店内が鮨詰めでは始まらないということだ。

そう、先日失望した「置きっ放し」の銀座の店とは異なり、ここの店員さんは皆きちんと置いている商品に一言持っていたし、ディスプレイ自体、ジャムの特徴や合わせ易い食材等がきちんと掲示してあって選びやすい。チーズとの合わせの相談もできたし、ハーブが強いものは今品切れなこと、また季節的にも夏に向けてはハーブ系は少なくなることなどが聞け、次回は何を買おうかという楽しみまで手に入れられた。いやー大満足。やっぱりこの手の店はこうでなくては:)

今回はお試しも兼ねて、「コント・ド・プランタン(いちごとミントと黒こしょう)」、「マルシェ(アプリコットとタイム)」、そしてミルクジャムの「ココ(ココナッツ)」をゲットして幸せの帰還。 また連休中のサービスということで、店の軒先でフルーツシロップとペリエを合わせたフルーツソーダをテイクアウトで出していたので、帰り際に苺のソーダを買ってみた。鎌倉の切通を踏破してきた身体に染み渡るペリエは、何より「液状化した苺」と言えるほど生のイチゴの味と香りが満載。あの「イチゴ風味」で感じる人工臭さが(当然だけど)一切感じられない「イチゴ味の飲み物」というのはかなり新鮮で、この店の旨さの実力を帰宅前に味わってしまった感じだ。

新しい醸造のビール、モルトの揃え、チーズのマリアージュ、中国茶ブーム、あるいはかつてレピシエが広く始めた紅茶の多種類量り売り──新しく世の中に出すものを、流行り廃りを超えて根付かせるためには、売り手側が「ブームの後」にも良さを認めてしっかり残ってくれる客層をどれだけ「洗脳」できるかに掛かっていると思う。その意味で、この店はコンフィチュールの旨さを知った如星にとって、これは根付かせられるかもと「一安心」できるつくりの良店でした。お勧め。

今日の一滴="−−−−" (2005/04/30)


 
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