VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 01月中旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2006-01-12-木】

ToHeart2 シナリオ雑感(1):このみ・タマ姉

シナリオレビューは流石にフルコンプしてから、なんて思っていたら、前回以来あっという間に時は過ぎ。一応もう後2キャラと迫ったので、どうせ書き上げるのに時間も掛かる事だし、ちまちま筆を進めておこう。ただし如星の視点解説として、順番が前後してしまったこちらを先に読んでいただいた方が良いかも。

柚原このみ:ブライト・ライト

前にも書いたけど、1のあかりシナリオの影無し焼き直し版という印象。「幼馴染から踏み出せない関係」って書いた時点で要点は終わり(笑)。軽い。元から18禁ならではの表現ではあるけれど、前作あかりシナリオの未遂話なんかは、なかなか生々しくて巧かったんだなと今更ながら思う。

ただし軽いとはいえ、筋は良く通っている。シナリオに筋が通ってるのは本来当たり前なんだけど、本作のシナリオは読み手が感情移入する間もない強引な展開を見せたり、あるいはキャラ行動の根拠が理解し難いものが多かったため、後になってその良さ(哀しい比較優位だが)に気づいてしまった。まぁ、予定調和大前提な作りなので筋も通しやすかったんだろうけど、たまにはそういう黄門様的ストーリーも悪くない。

キャラは純粋に可愛い。文字通り好み。貴明にまとわりついてても変な媚びが無くて鬱陶しさを感じないし、他キャラシナリオ含めて相手の微妙な機微を読むシーンも多い。如星はそういう「気の利く」キャラって結構ツボだ。あとこれも軽く前回書いたけど、さり気無くえろしーんが巧い……(苦笑)。「あの積極性はキャラ変わりすぎ」という人もいるようだけど、個人的にはあの手の好奇心旺盛で幼い面のある子ってああいうモンだと思う。キャラ性格と初々しさを破綻させないリアリティ。うーんほのぼの。

向坂環(タマ姉):スレイブ・レイヴ

同じく軽いシナリオ。こちらは純粋に浅いという意味であって、読後感は今ひとつ。私的感情を思いきり込めていうなら、話の流れはむしろ大嫌いなパターンであった。かつてグリグリの若葉シナリオで感じたのと類似の嫌悪感で、三人娘の「女の子らしい」陰湿な行動を読まされるだけで滅入る。加えて、タマ姉がそれを黙認(だろ?)するってのが一番腹正しい。ヘタレには優しい如星だけど、身内に対する敵対行動を黙視するのは(男女逆であっても)別問題だ。おまけにいざ天誅かと期待したら貴明本人が止めちゃうし、この時ばかりは奴にも大ヘタレの称号を迷わず付与してしまった。

まぁ、と言ってもキャラ自体は悪くない。悪く無さ過ぎて、他シナリオではすっかり狂言回しだし。便利ですね:) ストーリーの方も、中盤の思い出中心の展開辺りはなかなか良い。ただやっぱり全体として強引過ぎというか、いくらお姉さまキャラにしたって貴明=プレイヤーの意思をぶっちぎって引き回しすぎるのはどうかと。エンディングまで奴隷的喜び前面に押し出したままで、「世界中の全ての人間が、がどう生きるべきかを知っている」世界が大嫌いな如星としては受入れ難い展開である。最後には自分に傾くことを疑わない彼女の行動と、終盤の不安感のギャップとが描写不足で、悪い意味での御都合に見えてしまう。ネギには噴いたけど。ある意味このみサイドの裏返しなシナリオであった。ヴィミョー。

今日の一滴="−−−−" (2006/01/12)

【2006-01-13-金】

ToHeart2 シナリオ雑感(2):シナリオタイプ

そういえば。個々のシナリオの話は一旦中断して、世の中のシナリオ風評や他人、知り合いの感想から得た印象を含めた、シナリオ全体に対する雑感を先にもう一度書いておこう。前回はまだ半分程度の状態だった故に触れられなかった面もあったので。

さて、どのキャラが一番面白かったのか、どのシナリオが一番良かったのか等の話は、所詮主観的好みが介入してくる話だし、キャラがツボに入ったのかシナリオが巧かったのかで個々人が評価を分離するってのも難しいから、ここでそれをまとめるようなことはしない。元々この作品の傾向として「あるキャラに萌えられたらそれが全て」という面があるのだし。

ただ全般的な印象として、世の中の「感想」には一定の好き嫌いのパターンが見出せるように思う。「好き」の側にはキャラの魅力主体で気に入ったタイプと、シナリオの小気味良さが気に入ったタイプ、ひたすら萌えを追及したタイプがあり、「嫌い」の側にはその裏返し、キャラが気に入らないタイプ、シナリオに苛立つタイプ、純粋に萌えられないタイプなどがある。例えば、このみやタマ姉、愛佳辺りはキャラで引き付ける側だし、双子やささらは萌えがあるからという人が多く、由真やるーこはシナリオ展開とキャラのバランス型という具合に。純粋にシナリオが良いというタイプが存在しないのが、本作の特徴でもある(苦笑)。また上記パターンを裏返せば、このみやタマ姉は作りが浅すぎと言われたり、双子やささらはシナリオがダメ、由真やるーこはキャラかシナリオの何れかが気に入らなかった人には不評、などなど。む、いいんちょ愛佳にあんま否定的印象を聞かないのはあまりに強すぎるキャラのせいなのか(笑)。……約二名忘れている気がするが、花梨と優季は上記好悪ラインにすら乗らないタイプ、とも言える。もちろん、こういう類型化はあくまで一例だ。当てはまらないって人も多いだろう。

シナリオファイルサイズ
ささら980KB
双子907KB
るーこ674KB
由真523KB
愛佳497KB
このみ493KB
タマ姉392KB
花梨342KB
優季193KB

前置きが長くなってしまったが、上のような反応を別の視点から見ると、更に大きく二分できるんじゃないか、と思えてきたのだ。手前味噌でいうならば、ヘタレを容認できるか否か、である。もう少し一般的に言うならば、ヘタレ論の結文でも書いた「物語性」を楽しみたいとするか、あるいは「ゲーム性」を楽しみたいか、という二分であり、さらには長めのシナリオボリュームを「深い」と見るか「冗長」と見るかの差とも重なっているのではないだろうか。(なお先に書いておくが、何れかが「より良い解釈」と言いたいわけではないので念の為。視点の違いである)

……こう考えた始めたのは、身も蓋もなく言えば、物書きの常としてテキスト抽出をカマしてシナリオサイズを何気なく眺めたときに、長すぎる、冗長、貴明が気に入らないと評される事の多い代表的シナリオ・ささらと双子、それに近い評価を受けることのあるるーこが、純粋なテクスト長でも上位にあると気づいた時だ。ちなみにこの順位は如星が感じた「シナリオの厚み」に見事に準じているし、惜しいと評した由真シナリオもその通りの位置にある。風評一般に照らしても、「程よいシナリオ」とされる層、「キャラ萌え優先で軽い」と言われる層、「要らない子」な層が大体現れていると思うのだが、どうだろう。あくまで印象論ではあるのだが。

ちなみに参考までに、かの長大ストーリーFateのFate編が1.29MB、UBW編が1.02MB(正規ルートのみ)。ささら、双子シナリオはFate一編に匹敵するテキスト量を持っているというわけだ。そしてこの2シナリオこそ、如星が「書き込み量」に不満をもたなかったただ2つのシナリオである。しかし、世の中的には「長すぎる、テンポが悪い」という評を頂戴してしまう。更に、どうも「長い」という人ほど貴明のヘタレ度も我慢がならない傾向があるようだ。単に長く見せ続けられるから、という理由は当然思い浮かぶ。いやこの二人の時の貴明が特にヘタレだから長く感じるのだ、という向きもある。だが、ヘタレ度と長さの一致は単なる偶然なのだろうか。逆に如星としては、最低限上位3つぐらいな書込みがないと不満を感じてしまうのだけど、それは「ノベルゲー」とも言えるTYPE-MOON系、あるいは尺の長さや現実感ではずば抜けていた君望を遍歴してきたからかもしれず、自分の周りでも、Fate等を楽しんだ人間はテキスト量や貴明のヘタレにあまり文句をつけていないようだ。

これってつまり、TH2Xに求めているのが「ゲーム性」なのか「物語性」なのか、という読者層の違いではなかろうか。シナリオを「ゲーム」より「物語」として見せていく時、当然書込み量は増大するし、主人公の行動もより現実的になっていくだろう。無論尺の長さとテンポの良さは相反しない別個の概念だけど、キャラの魅力を堪能することに重きを置く読者が求めるテンポと、物語の厚みを求めていく読者が求めるテンポは当然異なるわけで。それが、各キャラの評判が上下両極に向かって分かたれる大元なんじゃないかな、と思うのだ。……ま、ちと我田引水的に結び付け過ぎだとは自覚してるけどね。(一点。おいおい双子シナリオが現実的かよ、というツッコミには、シナリオの異常性・SF性とキャラの行動基準は別の観点だと反論しておこう)

それにしても、タマ姉とささらのテキスト差は倍以上という点にも、TH2Xというゲームが方向性において統一感がない、という印象が数字として表れているようだ。「物語性」と「ゲーム性」、あるいは「キャラゲー」というコンセプトの混在というアンバランス。それは「てんこ盛り」というサービスと言えなくもないけど、如星のように全方位コンパチブルという人間にはともかく、片方を好むユーザーには片方が嫌われ、かえって誰も満足しない作品になってしまうのはある種定番でもある。ヒット作の続編と言う「誰しもが満足する作品」を求められたが故のジレンマと呼べなくもない。まったく、単発のシナリオを評価して二次創作の一発もすればいいこちら側は気楽なモノである。

……なんかオチがまとまらなくなってしまった。要はレビュー全般を通して、如星の立ち位置が「物語寄り」な点に留意されたし、というだけのことかも(笑)。ま、散発的雑感と言うことで御容赦を。

今日の一滴="グラッパ:Bocchino Cantina Privata 1996" (2006/01/13)

【2006-01-14-土】

ToHeart2 シナリオ雑感(3):愛佳・アヴェンジナイト

東鳩2雑想レビューシリーズ3話目。まったく、ホロウにすらまだこんな詳細なレビュー書いてないのに、何が如星を駆り立てているのやら。ここ数日は飲食系で当サイトを見ていてくださった方々がドン引きしてるのではという危惧もある(苦笑)。ま、ここは所詮(そして一応)二次創作小説サイトですからー。

小牧愛佳:ラブリィ・テンダリィ

いいんちょ。キャラの存在感としては最強クラス、シナリオも個々のシーンが光ってた秀作。あちこちで言われていることだけど、主人公貴明の「女の子が苦手」という設定が一番良い方向に生きているシナリオだ。もうその両者初々しい行動・反応の数々に、もはや初々しくもない自分はこっぱずかしさに身を捩りながら読み進んでおりました。如星は元より初々しいカポーを眺めるのが大好きで、愛佳に萌えというより二人揃ってのジュブナイルな行動に萌えまくっていたわけである。ええなぁ。初々しい恋がしたいなぁ(笑)

ただやはり、特に終盤は書込み量の足りなさを痛感した。郁乃の登場はあまりに唐突で、作品中では愛佳の行動に妹を意識した面があったと書かれてはいるものの、十分な伏線だったとはとても思えない。最初の病院途上で彼女が自分語りを始めるシーンは、口調にすら違和感が漂っていたし。終盤だけが全体のシナリオから浮いているのだ。姉妹の関係、お互いがどういう認識でいるのかの描写が絶対的に足りていないため、最後の感動的な桜のエピソードも、何故そこまで愛佳が必死になるのかが読み手に伝わってこない。今ひとつ感情移入しきれないのだ。

感動的とは皮肉ではなく、あれは実際TH2Xで如星が涙しかけた数少ないシーンである。それ故に、ホント書込みの足りなさは惜しかった。本来ならば、ここでもう少し時間とエピソードを費やして「妹を挟んだ愛佳と貴明の関係」を描き、イベントの一発も入れれば良かったのでは───などと如星は思ってしまうのだけど、先日書いたように、それを冗長な第二の山として嫌うユーザー層もいるのだろう。実際、3エピソードを盛り込んだささらシナリオは賛否両論真っ二つである。難しいところだ。

なお本キャラはえろシーンの一言が迷台詞としてネタ化されてるようだけど、これまた個人的にはこのみのシーンと同じく、初々しさ動転状態なお二人のアリガチン発言として大して違和感を感じないばかりか、微笑ましく眺めてしまったのだがなぁ:)

マナカ/アヴェンジナイト

さて、本レビューのタイトルは拙作ホロウ小説「アヴェンジナイト」から。

原作中の台詞、「幸せも不幸も、他人のものしか目に入らないコだから。自分の中身を空っぽにすることでしか、人と接することができないから」を待たずとも、何処となく近い匂いを感じていたFate系読者の方もいらっしゃるのではなかろうか。──中身が空っぽな正義の味方。自分の願いを持たない復讐者。つい最近思い切りそんなネタを主題に冬コミ小説を書き上げたところだったので、かなりツボに刺さってしまった。

もちろん、TH2X側はもっとライトな世界を扱った物語であり、アンリやシロウは極端な例ではある。ただ、士郎には引っぱたいてくれる凛という存在が生まれ、アンリはバゼットと出会って初めて自らの願いを得た。正義の味方には、ちょろっと差し出がましい手を差し伸べる、バカな名脇役が必要なんだと思う。愛佳にとっての貴明って、多分そんな存在だったのだろう。ギャルゲの(ニュートラルな)主人公と言われると、一瞬貴明の方を士郎たちに擬したくなるけれど、この物語では、それは逆なのだ。

しかしやっぱりこのトーンを語るにも、テキスト量の足りなさが不満となる。それでも桜の散るラストシーンが余りに惜しかったので、ホロウのイメージとも相まって、ついつい奈須風・如星節愛佳エンド挿入文なんて戯作をその場で書き殴ってしまった。今は反省している(何)。ま、ホロウといいんちょのクロスオーバーなんてネタを思いつくのは自分みたいなアホぐらいのモンだとは自負してますがね:)

以下雑感4に続く。

今日の一滴="−−−−" (2006/01/14)

【2006-01-15-日】

日曜昼間の飲み食い歩き

ひと月ぶりのClub NYX@銀座で相方とランチを。……と思ったら相方が小一時間遅刻してくる模様。どうせ時間を潰すならと、ふと思い立って銀座界隈のバール2軒を試してみることにした。

Cafe Cova:素敵エスプレッソ

まずは有楽町駅付近のCafe Cova。電気ビルの皇居側なので、駅から探すとちょっと見落としがち。去年後半のオープンだけど、既に何度か立ち寄っている。最初は新宿伊勢丹イタリア展の先行出店イメージがあって高尚な(?)カフェを想像してたし、実際中は素敵カフェなのかもしれないが、実際に足を向けてみれば店とバンコ(立飲みカウンター)の構造がしっかりしていて、ぱぱっとコインを渡してカフェが飲める嬉しい店であった。バンコがあっても妙に使いにくかったり、支払いがレジで間が悪かったりという店は多いからね。つわけで俺はバンコしか利用したことがないのである。

そして何より、ここのカフェは絶品なのだ。豆やマシンは良く覚えてないのだけど、あれはバリスタの腕がいいとしか思えない。エスプレッソのコクといい、クレマが生み出すのかチョコにも似た滑らかさといい、デルソレ本店のカフェにも劣らぬ旨さ。店の雰囲気も静かで、わいわい立飲みに来るというよりは、それこそ待ち合わせ前のひと時や、疲れて帰宅する前の時間、ふっと寛ぎ、キュッと締めて行くのに最適だ。エスプレッソ一杯を呷る数分の時間だけのために足を向けても決して損はないと思う。

追記:豆はコヴァオリジナル。マシンはやっぱりチンバリでしたね。バリスタ氏いわく「材料9割ですよ」とのコトだが、いやいやご謙遜を:)

三笠会館 La Viola:カフェとオンブラ

銀座三笠会館の1Fがバールになった、という話をIRCで耳にしてたので、次の店は早速そっちへ。線路を越えて銀座方面へ、晴れた日にこの界隈を歩くのは実に気持ちいい。

さてそのバールだけど、やはりメインはテーブル利用らしい。バンコは半ば飾りで、立飲みは入口付近に幾つかあるミニスタンドテーブルで、というタイプ。立飲みのレジがちょっと奥まってて(本当に微妙な差だけど)使いにくいのと、どっしりとしたカウンターじゃないので肘をついてのんべんだらり、という飲み方ができないのはちょっとマイナスだ。特にCovaのスタイルを味わった後だと気になってしまう。ちなみに立て続けにカフェを飲むと、Covaの神っぷりが良く分かる(笑)。ここも決して悪いわけではないんだけどね。しかし最近のニューオープンなバールは軒並みLavazzaなのは営業が頑張ってるせいなのか。

一方この店、オンブラ……じゃねえ、グラスワインが10種ちょい板書してあって、ワインを飲まない俺でもグッとくる。カフェは既に呷ってしまった後だけど、外はいい天気で気分は良く、おまけに待ち人はプラス10分遅れるとメールが来た時点で我慢の限界を突破。「ごめん我慢できなくなっちゃったからワインお願い」と、フリウリ・ヴェネツィアの白を汲んでもらう。俺のそんな台詞に、レジのおねーさんが「なら美味しく注いで持ってきます」とネタで答えてくれたのが嬉しい。際限なく酒肴を頼みたくなる欲求をグッと堪え、ウェイティングの掛かったテーブル席に律儀に並ぶ人々を横目にしながら、NYX前の食前酒と割り切ってスイスイ一杯。嗚呼この昼間から飲む酒の気持ちよさったらない(笑)

Club NYX

遅れてきた相方と共に、ようやく本番のランチ。軽く済ませようと思いながらも、結局お互い4皿コースをがっつり平らげていた:) そういえば前回の訪問は冬コミ本入稿祝いで、一ヶ月間の憂さを晴らすかのように三時間余の食豪プレイをしてたのである。サーブしてくれた女性にはすっかり顔を覚えられているようだけど、やっぱ食い意地で記憶されているのだろうか(苦笑)

相変わらずサービングは気持ちいい。味の方も相変わらず高レベルで、豚頭肉のゼリー寄せ等、なんつか野趣あふれる料理ってのがここの得意技なのかな(田舎料理を謳ってるし)。いつもはデザートのクレープを派手なところに行ってしまうのだけど、今日は塩バターとキャラメルのシンプルなタイプに。むむ、予想通り旨いなこっちも。毎度胃袋が一つしかないのが悔やまれる。

しかしこの店、休日昼間は分煙じゃないらしい。隣でいきなり吹かし出されて急速に萎える。その客はクレープだけつまんで帰ったからまだいいんだけど。食卓で煙の臭いを嗅がされることほど耐えがたい苦痛はないので、そこは何とかして欲しいなぁ。

マリアージュ・フレール:ルイボス・フレーバー

最後はマリアージュにて紅茶の仕入れ。前々から気になっていたルイボスのフレーバーを試してみるべく、仕入れといっても上のサロンでゆっくりとお茶していく。以前、秋限定の「ルージュ・ドトンヌ」のルイボス版が出ており大変旨いお茶だったのだけど、ルイボス版はその時のみで寂しい思いをしていた。ルイボスティーのフレーバー自体は他でもちらほら見かけるけど、やはり飲むに値する「フレーバーティ」はマリアージュ以外には考えられないし。……マリアージュ自身で、他にも普段からルイボスのフレーバーを置いている可能性をまったく考えなかったのは手落ちである。先月何気なく店頭で聞いてみたら「いくつかございます」とあっさり返事が返ってきてしまった。こりゃあ上で飲んでいける日に試してみるほかないでしょう:)

そんなわけで、シンプルにベルガモットをつけた「アールグレイ・ケープタウン」と、花とバニラの香りをつけた「スラバヤ」を試してみた。アールグレイの方は、紅茶の普通のアールグレイよりも淡さが強調(?)された感じで、アールグレイというよりはベルガモット単体が立っている感じ。スラバヤの方はマリアージュの真骨頂とも言えるタイプの複雑な香りで、花は薔薇の香りを主体にしているらしい。以前良く買っていたが最近渋みが強くなってしまった「ロータス・ロワイヤル」の後継茶と呼んでもいいかもしれない。

結局どちらも悩んだけど、今回は後者の「スラバヤ」の方を購入して帰還。ついでのお勧めを入れて、夏のフレーバーとして売っていた緑茶「テ・シュル・ニル」を練り込んだチョコレートを合わせてゲット。しばらくは幸せな夜茶生活が送れそうである。

今日の一滴="ルイボス:マリアージュフレール「スラバヤ」" (2006/01/15)

【2006-01-16-月】

人の気分も薬次第

薬が精神に作用できるって事自体は馴染みのものだ。今時鬱病等に投薬治療は常識的に行われているし、言ってみれば酒を飲んでの酩酊も化学作用の一種である。そういえば精神安定剤を飲まずに大後悔したこともあったなぁ。

しかしその一方で、やはり「化学物質が人の心を左右できる」と微妙な言い換えを行うだけで、感情面では奇妙な不安感は残る。イノセンス風に言うなれば、人間が機械的な、化学的な塊に還元できてしまうという結論に理性的には納得できても、人格だの魂だの、「自己」という存在に挑戦されたような気分になって反発を覚えるというか。アーサー・C・クラークが何かの作品中で、とある化学物質の慎重な投薬によってあらゆる宗教者を「転向」させられると証明された、なんて架空設定を使っていたけれど、あれなんかも意図的なブラックユーモアだろう。

あ、念の為断っておくと、別に如星はスピリチュアルな何かで人間が駆動してるという幻想も持ってないし、流行りの「重力の中の人」の信奉者ってわけでもない。人間や意識が化け学の塊で駆動しているというだけでも、ヒトは十分神秘的なのだから:)

さておき。如星自身は特に今まで精神的投薬治療の世話になったことはないし、精神安定剤の効果を実感できたこともない(苦笑)。酒の勢いでなんちゃらという話と作用論はどうしても結びつかないし、だから上記の精神話に対してはあくまで思考実験的な認識しか持っていなかった。が、つい最近ひょんなことから(厳密には違う話ではあるのだが)自分の精神状態が外部的に変えられるんだと実感できてしまった。──意外にも、「気管支拡張パッチ」なんてモノによって。

如星はここ半月ほど、師走以来の疲れもあって、数年前から持病化している気管支炎を食らっており、先日あまりに夜辛いようならと、喘息等に使う前述のパッチ(貼り薬)を初めて処方してもらっていたのだ。皮膚から少しずつ成分を血管中に放出するタイプらしいけど、気分的にはたかが貼り薬と高をくくっていた。さて、それを貼って、寝て、起きた日曜日。その日一日中、言い知れようのない不安感に悩まされ続けた。心が重苦しい。理由を幾つか考えてみるのだけど、それは自己分析というより犯人捜しで、確かに今仕事関連等で鬱めいた状況はあるのだけど、それが思っていた以上に心理負担になってたのか、なんて結論付けてさらに悩み続けてしまった。

が、再び夜になって入浴のため例のパッチを剥がそうとして、ハタと気づいた。これって動悸を招きやすくなるという副作用、というか主作用の一部があるのではなかったか。ちょっと動くだけでいつもより心臓が波打つような、常に軽い負担が掛かっているような感覚。それって簡単に「不安感」と誤解できるようなモノではないのか。試しにその夜〜次の日はパッチを貼らずに過ごしてみたのだけど、前日に感じていた重圧感は嘘のように消えていた。……種明かしをしてしまえば実に単純な話で、一種の「釣り橋告白理論」状態だったわけだ。釣り橋上の恐怖を恋の緊張感と誤解することで恋愛成功率が高まるというアレ。そんな作用をする薬をちょっと貼ってやるだけで、人間簡単に「得体の知れない不安」なんてモノを植え付けられるのだと、身をもって証明してしまった具合だ。知識がちょっとした実体験に結びついた一日であった。うーん。喜んで良いものやら。

ちなみに後日そのパッチ名をぐぐって見たところ、単なる貼り薬なんて侮るには危険なくらい強力な代物でござんした。いや別に俺の場合は正しい処方で使ってるから問題ないのだけどね。しかし心理的副作用なんて話は何処にも書いてないわけですが:)

今日の一滴="−−−−" (2006/01/16)

【2006-01-19-木】

ToHeart2 シナリオ雑感(4):由真

東鳩2雑想レビューシリーズ4話目。……そろそろ疲れてきました。おいおい本題はささらシナリオだろと思いつつ、まぁこれだけレビュー書くのって滅多にないことなので、気合入れて行きましょう気合。(2006/01/22:改筆追記)

十波由真:イーブン・ヘイブン

愛佳に次いでキャラとシナリオのバランスがよいタイプであり、個人的には一番「好みな」キャラクタかも。その一番可愛いとか、一番シナリオがいいとか、一番萌えるとか(笑)ではなく、こんな子だったら付き合ってて楽しいだろうな、というか。かつてマリみてに対して由乃の名前を挙げたのと同じ話である。由真にそんな印象を抱くのは、恐らく彼女のシナリオ自体がTH2X中最も「イーブンな関係」を描けているからと思われる。もちろん、如星がイーブンキャラに弱いという面が一番の根本ではあるのだが。

さて。ドタバタ系の騒がしいキャラ・シナリオかと思いきや、他人から友人に少しずつ変わっていく過程、不意に接近する関係、そしてすれ違い、ハッピーエンドと、なんとも王道な学園恋愛モノテンプレを気持ちいいぐらい描いてくれた良シナリオであった(お約束は面白いからお約束と呼ばれるのだ)。特に半ば付き合いだす過程がベタベタしてないし、由真側が一方的に最初から惚れてたってこともなく、お互いなんとなく、しかし心は固まってゆくというシチュにはリアリティと萌えツボの巧いバランスを感じた。また後半、由真の悩みを解決していく下りも、とかく一方的でないのが良い。悩みの外因自体は東鳩流のぶっ飛んだ設定ではあるものの、そこに対峙する彼女の悩み方は高校生そのものだし、問題解決に一役買う貴明の方も、決して上位からカウンセリングするような役回りではなく、対等の友人として悩んで、ちょっぴり自分が有利な足場(近い未来に不安を感じてないという能天気さ)だけを使って、友人、そして彼氏としての支えを提供している。最後の「ブレイクスルー」は流石に貴明側からのアクションでないとこの手のゲームとして成立しないけど、それでも由真に無条件の救いを提供したりはしてないし。

何よりこのシナリオの貴明は、まるで茜シナリオの孝之のように(笑)妙に好青年に描かれており、たった一つの冴えた答えにも早々と自ら辿り着いてる。「俺と一緒にいる時、あいつはいつでも幸せでしたよ」、と。ここに気付かなければ、所詮本当のハッピーエンドには辿り着けない。「他人の為に他人を救おうなんてのは死に値する言い訳だ」というアヴェンジャーの台詞ではないが、他人だけを幸せにするなんて不可能事で、結局は自分自身を幸せにする、自分と一緒に幸せにすることしかできないのだと。他人に無条件に渡した金貨なんて、相手からしても所詮は借り物、回り物に過ぎないのだから。

なおこの人間関係の要諦を、ささらシナリオの貴明は遅きに失して気付かされるのであり(苦笑)、君望遙シナリオの孝之は最後の遙に教えられる。FateのアーチャーやHollowのアンリにも関わってくる話だし、これって如星の好きな大テーマなのかも。

──とまぁ実に面白いテーマが篭められている一方で、やっぱり最終盤の書込みがあと一歩足りない(もういい加減書き飽きたこのフレーズ)。由真が激怒した理由が読者に説得力を持って伝わってこない。あと実はテキスト吸出しの結果PS2版らしきテキストが読めてしまったのだが、PC版18禁シーンに繋ぐための挿入話が文字通り蛇足になっている感があるし、微妙に悩みの根源がブレている辺り、土台の書込みが足りなかったことの証明でもある。最後の遭遇シーンは両版甲乙つけ難いというか、双方のブレンドがあれば尚良かったのだが……等々、惜しいが故の文句は尽きない。あと声を大にして言いたい。えろシーン前半はまだ良いが、この流れでシエルプレイは勘弁してマジでorz

ま、付き合う前から「なんとなく」で膝枕やキス未遂があったり、女の子側からこっそりちゅーしてみたりと、如星が身を捩るほど大好きなシチュが盛り沢山だったので、若干点が甘めになっているのは否めない(苦笑)。屋上の会話シリーズは、恋愛的シチュといい、彼女のテーマカラーの青を巧く織り込んだイベント画、妙に神掛かる声優の演技と、全TH2中でも指折りの名シーンだと思うのだが、その辺を評価してるところが少なかったのは意外であった。これもまた君望等にも似て、過去の恋愛経験とゲームをダブらせて秘孔を突くタイプの物語だったのかもしれない。

雑感5に続く。

今日の一滴="−−−−" (2006/01/19)


 
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