VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2006-02-26-日】

マブラヴ・オルタネイティヴ全体レビュー(バレなし)

マブラヴ・オルタネイティヴをこの週末を使った正味22時間の突貫プレイにてクリア。正確に言えばプレイ開始が日曜午前1時なので、ほぼ一日での(28時まで掛かったとはいえ)踏破である。いつもこの手のゲームをダラダラとクリアする如星を2時間睡眠のみで先を続けさせる力があった作品ということで、チャキチャキとレビューを書いてしまおう。

一応レビュアーとして前置きしておくと、如星はマブラヴ(エクストラ、アンリミテッド)経験者、サプリメントは未経験。その他予備知識なしの状態でオルタをプレイ。マブラヴ本体のレビューは実は書いてないが、まぁ面白かったけど本気でレビューを書くほどな感銘は受けなかった、ぐらいな評価。アンリミについては若干ここで触れてるけど、おまけパロディとしてはなかなか面白かったな、という感じ。アンリミは話としては十分終わっており、別に世界観の謎が解かれてなくても気にしない、というスタンスなので、別にオルタを待望してたわけでもなし。そんな視点からのレビューである。

なお一応致命的ネタバレになる部分は隠蔽します。あと面倒なので先に書いとこう、どっかで「また未完で続編が」とかいうガセを耳にしたけど、んなこたーない。ちゃんとシナリオは完結してますよん。

システムについて

全体としてゲームより映画を意識した造り。画面もワイドスクリーンサイズで、擬似3D状にキャラや背景を動かすageの鳴り物入りシステム「AGES-ACS」とやらでのご登場。……しかし真っ先に苦言を述べさせてもらおう。基本として分岐のない一本道20時間以上のシナリオを、字幕風の2-3行表示で読み進めるのはかなり苦痛。一発言、一文ずつしか画面にでないので、例えボイスを読み飛ばしてもテンポが悪いし、地の文は一括して読めないので情景がつかみ辛い。結局Ctrlでちょっと飛ばし、巻き戻し機能(これは15行分程出る)で読むなんてことまでしてた。ビジュアルノベル形式とまでは言わないから、せめて5-6行程度の(君望ぐらいな)テキストエリアを残して欲しかったところ。

また主に戦闘描写に使われてる画面システムについて。まぁ確かに良く動いてるなとは思うけど、FateやHollowの静止画移動と画面エフェクト、音響による演出の方が巧いなぁと感じる場面も多かった。音像位置計算までしてるらしいけど、逆にそれが仇になったのか、特定の台詞だけ妙に小さくなって聞き取りづらい個所もあったし。ちゃんと吐く息が白かったり通信画面の移動がスムーズだったりと芸は細かいんだけどね。また一本道だからセーブ/ロードについては大して重きを置いてないのか、君望と変わらぬ方式。Windowsダイアログに近いのにダブルクリックで保存できなかったりデータ位置を移動できなかったりという細かい不満は残った。要は全体としてあまりチューンはされてないなという印象である。ま、一本道ゆえに読み難さ以外の面はさほど気にならないけどね。

SF的・仮想戦記的世界観について(一応バレなし)

オタクカクテル。平野耕太がオタクの表現者スタイルとして、燃費が悪いエンジンを回すために映画や小説や漫画やらアニメやらを大量にカクテルしてぶち込むという話をしてたのだけど、オルタをプレイして真っ先に浮かんだのがその言葉だ。各種有名SFからの美味しいとこ取り、佐藤御大風な戦闘シーンなどが無節操なまでにブチ込んである。あくまでメインストーリーは「マブラヴオルタ」であり、それらSF的・戦記的要素にはテーマ性のような深みはあまり無く、文字通り「萌えておけ」という感じの並べ方ではあるが……これがなかなかにバランスは良い。作り手の意図に乗せられてるなとは知りつつも、オタクたる身としては思わずニヤリとしてしまうのだ。───いやぁ、「甲21号作戦」は過剰なまでにアツいですな。燃え/萌えまくりです:)

しかし一方で、もはやギャルゲと言うより「18禁仮想戦記ラノベ」に近い展開であり、SFや仮想戦記、軍事物に馴染みの無い層にはかなり読みづらい話だと思う。アンリミの続編という位置付けであれば問題ないだろうが、あくまでマブラヴの続編と思ってプレイした人、中でも王道ギャルゲなエクストラ側のファンは裏切られたと思うんじゃないかなー。念の為に言うと、如星個人的には全然違和感はない。宣伝イラストのトーンや元々のアンリミの設定を見ているならば、これが明るいロボットアニメ的展開をしないことなど簡単に予想がつくとは思う。思うけど……マブラヴの名前を冠してると難しいね。

またこれは前評判からだと見えにくいのだけど、仮想戦記風という以上に、本作の特に中盤はとても「右っぽい」。率直に言って、よくまぁギャルゲメディアにここまで政治色を突っ込んだもんだと思う。左な方々は朝日新聞に投書でもするんでないかという勢いだ。何でも左右思想に塗り分けるやり方は嫌いな如星は「ぽい」などと逃げ言葉をつけてしまうが、そんな如星でも少々説教臭さを感じるぐらいなので、果たしてマブラヴというストーリーの中でそこまでやる必要があったのかは疑問だ。ま、その辺にやかましい事をいうような奴がギャルゲをプレイするとも思えんけど:)

改めて未プレイ者向けに書いておこう。後述するストーリー面でもそうだが、このオルタは「アンリミ的世界に抵抗の無い人」か「本来のageらしいダークサイド」を好む人向けの作品である。少なくとも東鳩的な万人受けはしないことは確かだ。

さて、ネタバレ含むシナリオ面は次に回そう。……なかなか続きが書き終わらないのでこれまた先に記載。上で批判めいたことを多く書いてるけど、如星は総じて面白かったと思ってる。ただとかく万人受けしない話なので、面白かった面が他の人にとっては批判点になりそうで、どう文章に落としていいか悩ましいのが現状なのですよ。

シナリオ前半編に続く。

今日の一滴="−−−−" (2006/02/26)

【2006-02-27-月】

マブラヴオルタ・シナリオ前半

オルタレビューも長くなったので2分割。ネタバレ中心なので一応隠蔽してるけど、テキストブラウザとかだと見えてしまうので猫跨ぎリンクでも使ってくだされ。

なお2chのマブラヴスレ等は一切見てません。あの辺を読むのはもう懲りた(笑)。ただ軍事・SF面検証スレは割りと面白かったのでザクザクと眺めてみてる。TH2のるーこセクースの所でも書いたけど、ダメありえないトンデモと片付けてしまうのは楽だけどつまらない。むしろ強引に可能性を妄想するのが楽しいワケで、その辺当該スレの人々もなかなか分かってるようである:)

シナリオについて・全般

最初に総評から。色々文句はあるし、システムに起因する読みづらさの悪影響もあるけど、それでもなかなかに「読ませる話」に仕上がっている。それは単に世界設定が緻密に書き込まれているとかボリュームが厚いという事ではなく、アージュのお家芸たる「極限状況待ったナシに主人公を追い込む」シナリオがドス黒いまでに機能しており、読み手に強力にプレッシャーを掛け続けてくるのが主要因だ。結局如星が半徹夜+一日缶詰で読み進めたのも、この重圧に寄る所が大きい。息もつかせぬ畳み掛けるような展開が意図であれば、それはかなり成功している。

ただそれは逆に、その重圧から解放され一息つけるシーンがほとんど無い、ということでもある。元より全体が重い話ではあるが、幾つかのそれなりに緊張を解けるシーンも総じてテーマを語られるのに使われてしまうので、もう少しリラックスさせる幕間、山場に向けた「溜め」が欲しかったところ。例えば「甲21号作戦」前の揚陸船上の恋愛話シーンなどはそれに近いのだけど、あれは1シーンの中の休憩所であっても、シーン間の一段落というわけではないからね。

さて、それではもう少し中に入った話を。なおSF・軍事面の「感想」は更に後ろに別でまとめる予定。

イントロから最初の山場まで

最初の訓練編、アンリミと重なる話はイントロとして良くできてるね。読み手に対する世界観のリマインドと、「歴史を変える意欲」みたいなポジティブな方向で読み手を引き込んでいく。萌え恋愛ネタな第一章を餌に吊るして鬱ゲー本領地帯の第二章に読み手を誘い込む、あの君望的手法と言えないこともない:) ただ、これは物語全体を通して言えることなのだけど、伏線埋設と狂言回しの双方がほぼ夕呼一人って辺りが少々物足りない。冥夜以外の既存キャラは本当にタダの脇役であり、ぽつぽつと独立したエピソードがあるぐらいで、メインシナリオにも相互にも絡むことがないのだ。かろうじて次のクーデター編で彩峰に出番があるけど、書込み量が全然足りないので感情移入できないし……。これはマブラヴ本編にも感じたことである。同じアージュなのだから、相手のエンドでこそキャラが引き立っていた君望の妙を少しは思い出して欲しいものだ。

さて、次がそのクーデター編。天元山の歴史改変が裏目に出る造り、初の実戦描写など、SF風軍事物としては楽しいシーンが続く。ただ前項でも書いたように、ちと説教臭いというか、愛国心を全面に出しすぎという気はする。話の是非自体といえば、如星自身には違和感はない。一応右手を胸に当てて星条旗に向かうコトの何たるかを肌で感じた経験もあるわけだし。ただ一般的な読者を相手にした時に、こういう押し出し方はどうかなという商業的(?)観点だ。そういう概念に馴染みのない読者層を納得させるほど全体の描写が巧いわけでもないので、ここは理解不能と言われても仕方ないように思う。加えて、この話は全体のテーマにとっては重要な伏線なのだけど、差し当たりこのエピソードの結末段階で得られるのが白銀の青臭い決意ぐらいなので、読後感という面でも今ひとつ。そこから新OS実地テストで更に青臭く持ち上げといて、最後に「あの」絶望で叩き落すやり方は何処と無くエヴァを思わせ、巧いっちゃー巧いし如星個人的にはかなり好きなのだが……。(なお前段で書いたとおり、彩峰の関わり方は描写不足過ぎて意味不明。エクストラネタで脳内補完しろというにも無理がある……)

で。散々あちこちでネタになった「グロシーン」。これは完全に余談なのだけど、別段グロに強くない如星でも別に平気だったんだよなぁ。軍事物と考えればもっとエグいシーンもあり得るし、この作品のトーンを考えると「余談」ぐらいなスパイスだと思う。ただ、その発生箇所は確かに巧い。ホッと一息急転直下というだけではなく、ここで彼女の死を強烈なモノにしておくことで、「次の死」が更なる衝撃で迫ってくるのだ。……いやぁ、やっぱアージュは追込みが巧いよ(笑)

そのまりもの死を転換点として、次が逃走と絶望の「元の世界(改)編」である。

……長くなったので以下次号

今日の一滴="−−−−" (2006/02/27)

【2006-02-28-火】

レビュー書いてて思うこととか

我ながらなんともつまらないモノを書くようになってしまったな、とふと思った。

先日書いたマブラヴ前半シナリオレビューを改めて読み返していての事である。こんな文章誰が読みたいんだ、などと思ってしまうのは、他ならぬ如星自身が読みたいタイプのレビューではないからだろう。本来、如星が読みたいと思うタイプのレビューはむしろ「感想」と言うべき代物で、どうせ得られぬ客観性など放り出し、主観的に思いの丈を書き連ねたモノ。ただし、それがあくまで主観であることを心得ているような文章だ。

───客観的に努めようが主観で書こうが、結局読み手はそれを頭から信じたりはしない。あくまで自分の視点に読んだ物を投影して、理解するのだろう。であれば論文などならいざ知らず、元より「作品への感情」という定式化できない対象について書いたモノなのだから、わざわざ「万人の視点」に近寄らせた文章よりも、他人の視点そのままが知りたくなってしまうのだ。それを、どんな視点から見ているかを判断するのは自分/読み手でいい。

その際、読み手からすれば書き手の情報はとても有益な情報ではあるし、それがWeb日記等で感想を眺めることの楽しみでもあるのだが、最悪書き手の情報などない、単一のレビューのみを目にした場合ですら、その文章自体から書き手の視点は見えてくるモノだと思うし、見えてくるのが良いレビューなんだと思う。「あくまで主観であることを心得ている」とは、そんな「主観に対する客観性」と言えるかもしれない。如星がamazonのレビューなどの中にも有益さを見出せるのはそういう時である。……ま、あそこは「感想文は粗筋ではない」という日本で唯一なされている文章教育すら覚えてない人も多いのだけど。

翻って、なんだか先日の文章は妙に分析めいていて、中立にならない中立でも保とうとしてるかのようだ。つまんねぇ。二次創作を意識してこういう作品に触れるようになってから、シナリオ構造の分析という視点にどうしてもなってしまうのは、自己弁解ながらある程度仕方ないとは思う。しかしそんな小賢しい分析は自分の中で持っとけばいいのであって、他人に見せるべき/見せたい文章とは、あくまで「如星」という読み手の方々が触れている人格が「どう感じたか」じゃないかと思うのだ。読み手の皆様それぞれが持つ感想と、如星の感想との「ギャップ」が見えるような文章こそ、少なくとも「違う視点の快楽」を標榜する如星が提供できる「読み物」ではなかろうか。

……ただし上の文章は、ギャップが娯楽だということ、「違うことって楽しいよね」という価値観が通じるのが前提ですな。もちろん「同感」してもらうのだって嬉しいので誤解されたくはないが、とは言え「同じであること」に至上価値を見出す人には、如星の文章は正直向いてなさそうだ。ま、そんな心配せずとも、そういう方はウチなんてとっくに読むのを辞めてるのだろうけど:)

さて、そんな自省を込めつつ、以下どうやって続きを書くかねぇ……。とりあえず、この思索の元になった文章を変えるような真似はしませんので。続きについてはしばしお待ちを。

2006.03.05追記:途中「読み手」と「書き手」を正反対にして書いてたよ……(汗)

今日の一滴="−−−−" (2006/02/28)


 
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