VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 01月中旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2005-01-18-火】

通販開始のお知らせ

大変お待たせいたしました。

通販申込みフォームの準備ができましたので、冬コミ本「雪の境界」の通販を開始いたします。インフォメページからもリンクを張っておきましたので、よろしければご利用くださいませ。

詳細は上記フォームページにイベントでの頒布価格600円に加え、送料・手数料で200円をご負担ください。ただし複数冊の方は送料が変動する可能性がありますので、折返し当方からのメールをお待ちください。

スタイルチューニング

今回通販ページの準備に際し、インフォメページの再構築を合わせて軽ーくやろうと考えていましたが、実際に手をつけてみると結構時間を食ってしまいました……。元々単純にコピペで中身を移すという訳にもいかないのですが、それ以上にスタイルシートの再チューニングに予想外に時間を取られてしまったのが原因。まぁ、以前の「屋に屋を重ね過ぎてスパゲティ状態」を回避すべく、まだまだ基礎を叩いている状態ですから仕方ないのですが(苦笑)

祈りの海:やまなしおちなしいみなし

グレッグ・イーガン「祈りの海」読了。

昨今のSF界で評判が良い作家、と聞いて手をクリッコに)伸ばした短編集。だが結論から言うと、久々に裏切られたSFになってしまった。

他所の評判でも触れられているように、確かにSFとしてのアイディアは凄かった。各短編において、特異な世界像、それを当たり前と過ごしている社会を次々と描いていく力量は確かにある。ツカミとしては最高で、久々に良質の新規SFネタを摂取した気分になれたのだ。

が、一つ、また一つと読み進めて行くと、次第に苛立ちが溜まってくる。苛立ちというか、期待をかわされ続けるというか、早くこのたぎるナニを鎮めてください(何)というか……。要するに、どの話もオチがないのである。いくら短編にしても「物語」がなさ過ぎるのだ。どの話も、起承が過ぎて、さあ山の転結!と思うと残り1ページで話が終わってしまう。読み手は中途半端な状態で放り出され、なまじネタが良いだけに大変悶え苦しむことになる。次の話こそは……と読んでいったが最後まで満たされることはなかった。

ちょっと冷静に読み返してみると、この短編のほとんどには主人公が不在だ、という事がわかる。素晴らしいSFネタが展開された世界の「語り手」としての一人称存在はいるのだけど、その存在は物語の主軸を成すはずの「問題解決」に最後の最後で関われずに終わる場合がほとんど。解決がスルリと世界/作者から与えられて終わるか、あるいは「さあ、どうなるんだろうねぇ……」というジャンプ打ち切り漫画のような終わり方をする話ばかりなのだ。これでは「主人公」とは言えず、感情移入も最後にはズルリと抜け落ちてしまう感じだ。

これでSFネタも腐っていれば駄本としてあっさり捨てられるのだけど、先にも書いたようにネタだけは極上なのが困ったところ。捨てられぬココロを抱え、満たされない想いを求め(苦笑)──最後の表題中編作「祈りの海」に望みを掛けるも、他の話よりマシとはいえオチはダルい。一神教と脳内化学の交わりにしてはエピローグに割いた字数も少なく、クラークのような仏教的思想を背景とした深みを持つSFを知っている身には、正直薄っぺらく見えて仕方が無い。

そう、それこそ例えばクラークやアシモフなら、これら短編のネタ1つから、立派な起承転結のついた話を3つ4つは書いていたろうな……と思わずにはいられなかった(両御大とも、ロジックで綺麗にオチをつける名手である)。一方で、このオチの無さがSF界、いや世の中全般に受け入れられているとするならば(amazonのレビューを見ると、ネタが凄いというだけで5ツ星が付いてたりする)、それは如星が現在の「やおい」だと思っている「萌え漫画」──山なしオチなし意味なし、萌えさえあればOK──の風潮は、何も秋葉界隈に限った話じゃない、というコトなのかもしれない。如星は別にソレが悪いことだとは思っていないけれど、例え萌えであろうとストーリー性を重視する身からすれば、寂しさが漂うのは確かである。

今日の一滴="紅茶:祁門特級" (2005/01/18)

【2005-01-19-水】

バー・テルス:a place to hide in.

週の真ん中から麻布十番の焼肉苑へ。安いわ旨いわで身内じゃ「ジュバーソ」の愛称と共に定番店になってるのだけど、麻布十番は横浜人に取っては非常に帰りにくい。どの幹線に出るにも中途半端で、最近は定期を無視して大門経由京急快特直通などで帰投してるけどね。

とまぁ、そんな帰りづらさもあって、肉後はいつもそそくさと街を出るのである。が、今日は強烈な悪魔の誘い手たるぶどう氏の誘惑に負けて、前々から話は聞いていたお勧めのバーに寄ってしまった。

それが、Bar tellus(バー・テルス)。小奇麗な入口を降りて地下の扉を押し開けると、暖かい木の色で染まった小さな空間が出現する。本当に「小さくまとまった」という表現がピッタリな、それでいて狭さは感じさせないバーだった。メインカウンターは細長い木のリビングテーブル、といった風情。寛ぎやすいローカウンターは、食後にふらっと寄るには丁度いい。狭い店でも圧迫感がないしね。

食後だし、僕は初めての店だしということで何かアイラを、と私的定番を持ちかけてみたのだけど、そこで勧められたのがボウモアの3年もの。以前やはり若いボウモアを飲んだ時はかなり荒々しい酒だったけど、今回のはバーテン氏曰く、3歳とは思えぬ丸さだとか。もう最後の一杯分ぐらいしかボトルに残ってなかったのにも後押しされ(笑)、実際に頼んでみると本当に甘い。飲まずに舌の上に酒気を吸い込むだけで甘みが広がり、口に含んでも蜜水の如く。若さがトゲではなく透明さに表れているような不思議な一杯だった。……うーん、旨い。

ここは他にも結構マニアックな酒を置いているようで、来るたびに「その時ある何か」を頼めるのは楽しいかも。いきなり変態的な(誉め言葉)酒を勧められたのには驚いたけど、どうやらぶどう氏に連れられて来た時点でダメ認定(誉め言葉)されていたらしい:) またワインに弱い如星には直接関係はないのだけど、バーテン氏とソムリエ女史がペアを組んでやってる店、というのは珍しいと思う。同行人を見てると、ワイン方面でもかなり遊べるようだ。

カウンターは本当にのんびりした雰囲気で、隣ではシガーも出ていた。個人的には歓迎なのだけど、隣のお客さんに客からもバーテンからも(儀礼的にも)一言もないのはちょっと気になった──俺なんかはシガーの香りは好きだから「儲けモン」とか思っちゃうけど、アレは苦手な人には耐えがたい「臭い(煙いではない)」なのだ。ま、この店はこういうモノ、と心得て使うカウンターかもしれず、またシガー自体あまり香りのキツい物は置かないようにはしてるらしい。この辺は難しい配慮かな。

雰囲気、酒共に文句のつけ様のない良店。ただ惜しむらくは、店のレベルにしてはつまみは普通。チーズもナチュラルを置いてるのは嬉しいが、Stonefree@横浜のチーズ・クオリティに慣れてる身には正直物足りない。まぁこれはそれこそ多くを求めすぎかもしれないけど、この店ならもっと「ひどい」チーズを出しても受け入れられると思ったのも確かである。まだオープンから一年経ってない店ということで、これから色々熟成していくのだろうけどね:) とりあえず十番で寛ぎの酒が欲しい時には迷わずお勧め。

今日の一滴="酒・アイラモルト:ボウモア3年" (2005/01/19)

【2005-01-20-木】

侮り難しはローゼン・メイデン

もう先月以前の話だけど、アニメの頃に結構名前が出てた「Rozen Maiden」の原作漫画1〜4をまとめて読んでみた。アニメについては興味が無いのでここでは割愛。

昔1巻が出た頃に表紙を見て「ひらふり被服な萌え漫画」程度な印象でスルーしてたのだけど、最近名前をよく聞くようになったのと、冬コミ原稿時期の精神安定剤として被服趣味の摂取が必要になり(苦笑)、中身を知らずにゾネでまとめ買った如星としては珍しいパターンである。

結論から言うと、いや甘く見てました、という感想。やまなしおちなしの萌え漫画、などと思ったら大間違いであった。話作りも構成もしっかりしてるし、人間側の人物関係・描写も面白い。人形側も真紅、水銀灯、雛苺、翠星石──どれも「ありがちな」キャラかと思わせておいて、一捻りが加えてある辺りが読み手を引き込む巧さだろう。特に真紅みたいなキャラ造りは失敗すると目も当てられないのだが、それを途中からの補正が効かない主役に持って来ているのは流石である。

もちろん一方の被服趣味という観点でも、各キャラ毎に丁寧なデザインが振られていて良い感じ。「よくまぁこんな描き込みの面倒なモノを」と下世話な感想が沸くほどだ:)

女の子にふりひら服着せてみました、というネタは流行りモノではあるけれど、一本の漫画として地に足が付いていて、かつ服装も手が抜かれていない作品というのは貴重だと思う。「人形が動く」という原点を、シナリオ面でもデザイン面でも追い求めた結果の作品と言える。いやはや、今まで放置しててすみませんでした……。

今日の一滴="中国青茶:黄枝香" (2005/01/20)


 
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