VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 03月下旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2006-03-20-月】

グランド・コンフォート・フロア

オークラの新フロア、グランド・コンフォート・フロアに行ってみた。

先週末に突然本日20日が休めることになり、思いがけず四連休を確保。相方は休日出勤で出払ってるので、まぁソロで気楽に何処ぞ国内でもふらつこうかと思ったのだけど、急な話で予定を立てる間もあまりなく、宿も交通手段も埋まり気味。如星ってヴェネツィアなんぞに出向いている割に国内旅行をほとんどしたことがなく、折角だから沖縄にでも食い倒れてみようかとも思ったけど、金糸モードで空を押し渡っても肝心の天気が今ひとつのようで、流石に勿体無いのでこちらは断念。

しかし一度火のついた物欲(というより消費欲)を収めてしまうのもつまらない:) 結果、久々に都内ホテル欲でも満たそうと思い立つ。ひたすらのんびりできる、という観点なら真っ先に「山の上」が思いつくのだけど、今回は最近増えてきたホテル系のアロマセラピーやスパを試そうという観点でちくちくとサーベイ。前々から話だけは聞いていて、ちょいと気になっていたオークラを選んでみたというわけだ。

実は、オークラへの宿泊自体今まで何となく縁が無く、今回が初めてだったりする。結果からいうと「ファンが多いってのも頷けるな」という好印象。かなりクラシカルな作りで、何処かあの宴会ホテル全盛期を思わせてしまうイメージこそあるけれど、折々のサービスが本当に心地よい。巧く言葉にできないのだけど、精神的なところに訴えるモノがあるというか、その結果「ファン」となる、つまり多少気になることがあっても贔屓目に見てしまうような、そんな客層を作ってしまう力を感じた。……あ、別に今回気になった事があるという意味ではないので念の為。フロントからベルボーイ、ラウンジの給仕長、ルームサービスを運んでくる女性、バーテン、ドアマン、夜中にすれ違う従業員まで、単なる挨拶に留まらない一言を掛けてくれるのが嬉しい。これは「内側に取り込まれる感覚」と言ってもいいかもしれない。

さて、肝心のグランド・コンフォート・フロアである。要は2フロア分の客室をコンセプトに基づき一新し、さらにリラクゼーション系の施設をつけたといったところ。客室はカウチやらガラス張りで開放的なバスルームがついてたりと、シングルの場合広くはないけどかなり快適。広々としたベッドにリネンが気持ちいい。またアメニティのバスソルトがなかなか優れモノで、何か派手に香ったりはしないのだけど、本当に湯当たりがまろやかになる。日頃からアレルギー肌でその辺敏感なので、こういうサービスは嬉しいね。

そしてフロア付きの施設「ネイチャーコート」は、ホテルの雰囲気からはカチリと切り替わった今風の造り。といってもソフトウェア面、人間の対応は前述の心地よさのままである。今回は肩のラベンダー系のオイルによるアロママッサージ、ミストサウナ、そしてロスマリンのバスセラピーを受けてみた。……いやー、香りモノ好きにはたまらないラインナップ。平日昼間で空いていた事もあり、本来20分ずつのコースなのだが「お好きなだけがゆっくり」というモードで、脳味噌の芯まで寛げた。その場で野菜や果物を刻んでフレッシュジュースを色々作ってくれるのもありがたい。湯上りにかぱかぱ呷ってリフレッシュ。

ただ一点残念なのは、入口でエリア用のローブに着替えているのだけど、ここから部屋までの数十mのために、元の服に着替えなおさなければならない点。もう汗をかいて流して香油を塗ってと、寛いだ身体をそのまま自室のベッドに横たえたい。浴衣で廊下を歩かれては堪らないというのは分かるんだけど、エリア〜部屋間の移動限定という条件で、何か見栄えのいい羽織りモノでも作ってくれればいいのになー。一応これは要望として伝えておいたけど、実際に他の客からもそういう声は多いようだ。

2006.06追記:これについては、今年の五月頃から実際に移動用のローブが実装された模様。やっぱ要望は多かったのね:)

翌朝はこのフロア専用の朝食をルームサービスで。つーか爆睡しておりルームサービスのチャイムで目が覚めたのだが(笑)。ダマスクローズを浮かべた根菜のスープ、燻製サーモンとほうれん草のグラタン、刻んだフルーツ入り豆乳、メイプルシロップで頂くヨーグルト、そしてトーストにはローズジャム、ミントのフレッシュハーブティ。如星的ホテル評価の常として、朝食のこの気合の入り様は高ポイントである。ラウンジに出て周りの雰囲気を楽しみながらの朝食も悪くないんだけどね。

というわけで、最初から最後まで満足の連続で過ごせた、老舗の貫禄を感じさせるステイでありました。これは是非ともキチンと二泊ぐらい取れる日を作り、フルに丸々一日寛ぎたいものである。なおこの他にも夜訪れたホテルバーが格段に良かったのだけど、これはまた別トピックで。

今日の一滴="モルト:ハイランドパーク1981" (2006/03/20)

【2006-03-21-火】

オーキッドバー:ホテルバーのクオリティ

昨晩はオークラのメインバーたる「オーキッドバー」へ。久々に本当に良いホテルバーに出会えましたよ:)

っと。ホテルに泊まった時の最大の楽しみの一つがこのホテルバーという存在なのだ。まだ寝るにはちと早い、という辺りでちょいと余所行きを羽織り、部屋を出てふらりと入ってすぐ旨い酒が楽しめる。気持ちよく呑んだら部屋番一つサインして、酔った身体をエレベーターに放り込めばすぐにベッドが待ってるのが何より嬉しい。飲み帰りの何が嫌って、品のない酔っ払いも多々いる深夜の電車で気分が醒めてしまうとこだと思うクチなので尚更。

しかし、じゃあホテルバーを「バー」として見た時に満足が行くかというと、これがなかなか難しい。

一つには客筋の問題。色んなタイプの客が来ること自体はバーの楽しみでもあるけど、特に休日などパーティーの二次会か何かの集団が雪崩れ込んできて、テーブルでビールを呷って管巻いてるのには閉口する。後はいくら宿泊客とはいえ、Tシャツでやっぱりビール呷ってる若い連中を帝国のオールド・インペリアル・バーですら見たときには驚いた。まぁホテル側もラウンジ代わりに設定してるところが少なくないので、客だけの責任ではないのだが。

もう一つは、バーの本質である酒の揃え。何処にでもある定番酒ばかりという個性の無さはホテルでは仕方ないのかも知れないけど、そんな中でももう少し「個性」を出して欲しいと思うことは多い。定番酒以外は成金相手の馬鹿高いスノビッシュな酒しかないのは個性とは言うまい(苦笑)。ま、とは言いつつ何処でも大抵数本ぐらいは「バーテンの好み」であろう中間層の旨い酒があるものなので、一夜の酒場としちゃそんなに不満を感じることはないのだけど。……あ、いかにも観光客狙いの駄カクテルを下手糞が振るようなラウンジバー等はそもそも論外ね。別に高層階の展望なんて「バー」には求めてないってば。

前置きの愚痴が長くなってしまったが、要は「純粋なバーとしてまた来たい」と思わせる場所は結構少ないのだ。渋谷のアリマックスや飯田橋のアグネスなど、新興・小規模系のホテルは結構面白いバーを置いてたりするし、酒は平凡でも座りたくなってしまう山の上なんて場所もある。ホテルだから万人向けだから、という言い訳は通じないだろう。──そんな中、今回のオーキッドバーもそんな過度な期待はしてなかったのである。いつもの様に、まぁ寝酒でも呷りますかな、という心持ちで、深夜近くのホテルロビーへと降りてゆく。

と、まずは入口にモルトの「HIGHLAND PARK」の案内が出てるのが目を惹いた。これは後でバーテン氏に聞いて知ったのだけど、オークラは2000年から毎年「オークラモルト」を一銘柄買い付けてきて、オリジナルボトリングで出しているのだとか。今年はハイランドパークの1981年、つまり25年物。定番の蒸留所だけど、年数とオリジナルラベルが気になり、カウンターについて早速バーテン氏に話を向けてみたのだ。……どうもこれが氏のツボをついたようで、以降モルト話が盛り上がる盛り上がる(笑)。そして酒棚を眺めてみると、これがどうしてホテルバーとは思えないほどモルトの揃えがいい。ここのもう一つのバー「ハイランダー」がその名の通りモルトを売りにしてる影響だろうけど、それでもこちらにこれだけの酒を並べたのは、元ハイランダーにいたバーテン氏の趣味と主張だとか:) 例えば如星の想い出の酒たるポートエレンの23年やら、自分がアイラを飲みだした数年前で既にレアモルトだったブローラ、しかもティルナノーグのボトルなど、単に名酒というだけでなく、変人好みな酒が並んでいたのだ。酒は進んで話は弾み、氏が「正直好みじゃない」という去年のオークラモルト、クライヌリッシュ辺りは味見までさせてくれてしまった。

このバーテン氏はホント巧い方で、あー確かに去年のはトゲばっか強くて微妙だねぇ、なんて話をしつつ、さりとて自分に張り付きっぱなしにはならないバーテンらしい適度な距離感。また既に満腹の胃袋に入れる酒肴でちと悩んでいたところ、メニューにはないが「ベーコンをカリカリに焼いて胡椒したのとか自分は好みですがどうでしょう」と薦めてくれた。そんな酒を飲む人間ならではの薦め方も巧いし、またあの外で食うサンドウィッチでよくある、細長くて薄いベーコンに軽く手を入れるって選択も実にホテルらしい。この日の満足度の八割方は、この方の功績である:)

ちなみに付記しておくと、流石に立地柄なのか客筋はさほど悪くない。テーブル席でくだ巻いてるのもいたけど比較的静かだし、少なくとも真面目に酒を傾けてたし。なお内装はクラシカルなダークウッド基調で狭めというか細長く、バーらしい感じで落ち着いている。どうもラウンジテーブルのみの部屋が別にあるらしく、そういう分け方は(上で書いた愚痴で分かるように)巧いなと思う。今回注文はしなかったけど、やはりレストランを抱えるホテルならではのフードも充実してたし、その面でも合格。もう少しチョコなんかは面白いモノを置いてくれてもいいとは思ったけどね。

というわけで、小一時間の寝酒タイムは思いの他濃密なひと時に。これはバーの質はバーテンに大きく依存するという良い証左であり、それを妨げぬ空気があり、正直、今夜はホテルバーって存在を見直してしまった。その辺は相手に素直に伝え、向こうからも嬉しそうに名刺を渡され、実に幸せな気分で離脱。や、確かに少々値段は高めだし、宿泊してなきゃ立地も行動圏外ではあるけれど、これは泊まらずとも来ても良いと思える久々のホテルバーでありました。感服完敗。

今日の一滴="−−−−" (2006/03/21)

【2006-03-22-水】

誕生日とはいいつつも

涼宮遙&維如星誕生日、とは言いつつも結局何もできずじまいorz

今日の一滴="−−−−" (2006/03/22)

【2006-03-26-日】

春先迎撃戦@伊豆半島

自分の誕生日の頃に休みの取れなかった相方と、新年度に向けての休暇もかねて伊豆は下田まで温泉に浸かりに行ってきた。

何度も書いているように基本的に国内には疎い如星、伊豆方面に出かけたことなど大学時代の合宿以来、そして下田入りは初である。こんな海に突き出た山地の先端にして、そして笑ってしまうほどの親米都市だとは知らなかった。流石は砲艦外交遭遇の地である(苦笑)。ケネディからブッシュJrに至るまでわざわざ訪問して記念碑おっ建ててるし、「余は平和の使節として此の地に来れり」というペリーの台詞をあのマッカーサーが刻ませに来てる辺りは皮肉すぎて笑ってしまう。いやー面白い土地だ。

さておき。この時期の旅行ということで、本来なら冒頭は「春の訪れ、海に臨み山に咲く桜を愛でに行ってきた」とでも書くべきところだろうけど、冬偏愛派の如星としては一応冬の終わりは惜しむべきものなので、あえて温泉でのんびりという方が主眼ということにする(笑)。……とはいえ、天気にも恵まれた春先の空気はやはり気持ちいい。岩塊が海に浮かび、そこに松が立ち並ぶという日本的な海岸風景を見るのは実は初めてで、いかにも浦山という感じでなかなか風情があっていい。そして桜が見頃であり、そこはやはり伊豆半島、元々葉桜好きな自分には嬉しい「大島桜」があちこちに咲き誇っている。白と新緑のコントラストが青空と海に映えて美しく、遠めに眺めるとまるでジャスミンの茂みを見ているかのよう。やっぱり花ばかりが重たく垂れる染井吉野より好みだなぁ。ちなみに海際の山地にあり日当たりがよいせいか、余所で見る大島桜よりも緑が濃く、コントラストが更に美しい。

ちなみに今回は相方のアレンジで、一応日本型旅館スタイルを取る場所に泊まってみた。これまた初体験である。いわゆる「仲居さん」のいるシステムであり、滞在中に折々「干渉される」のが煩わしいという人もいるようだけど、如星としてはむしろルームサービスの感覚、それこそ先日のオークラ滞在でもルームサービスに起こされ、寝ぼけつつ朝飯を置いてくよう指示するのが別に気にならない身としては、逆にそういったゲスト対応の日本版なのだな、と素直に受けられた。料理も単に旨いだけではなくキチンと土地の色が出ていて好印象。そしてそこに温泉がついてるのだから、まぁ文句のつけようもない。実にリラックスできた滞在でありました:)

最後に、下田駅の金目鯛駅弁(塩焼きのものと、山葵葉に包んだ鮨と)が大変旨かった点を付記しておこう。やっぱ特急に乗って食う駅弁は最高。

今日の一滴="−−−−" (2006/03/26)


 
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