VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
柄にも無く人間関係論めいた文を長々と書いてしまった反動か、随分間が空いてしまった。反省。
なおあんだけ長く書いた文章をF氏が見事に一段落で要約してくれましたorz。ホント、メソッドではなく状態の話だというのが改めて実感できたり。後でその辺も含めてコメント日記を書く予定。
ネムキ7月号増刊「
長らく単行本の出ていないプランツだけど、この特集号が単行本未収録話つきで出るという話を先月頃聞きつけ、プランツファンとして一日千秋の思いで待っていたところだったのだ。偶然新着リストに入っていたmixiのプランツコミュ、そして店主のお導きに感謝。
どうせ既出話再録メインで、未収録話なんて一つか二つだろうと踏んでいたが、豈図らんや、なんと未収録分だけで五話入り。しかもどれも品質の高い話ばかりで、久々にプランツ成分を大いに補給できたのでした。せっかくなので各話にちょっとコメントなど。
とてもスタンダードな観用少女物語。笑わないプランツと笑いを絶やさない少女、というスタートからそれが逆転していく素直なストーリー作りだが、相変わらずの心理描写に映える川原節が素敵。
とてもスタンダードな観用少女物語2。不思議と求められて愛されて、という王道中の王道。ほへら。
2つまとめてしまったが、前者は「プランツの種」なるものに見る夢、後者は目覚めぬプランツを想う少年の話。どちらも短い小話だけど、こういう変り種もありかな。プランツの種には「あの」白雪オーナーが再登場するのが笑える。相変わらずのデレ(オーナーが)っぷりが最高。
今回の単行本未収録話の白眉。美しく香るプランツに、プランツそっくりの女性。不思議な霧と噂と匂いに溢れた「この街」の空気、その中に佇む観用少女店と店長の非現実さ。観用少女独特の少し陰のある耽美な雰囲気と、「ポプリドール」を思わせる小さな毒の入った物語。いやぁ、この一話のためだけでも買った甲斐があったというものですよ:)
何度読み返してもやっぱ最高!(笑) 白雪!白雪!白雪!むしろ宝石屋の兄ちゃん!
「オレは決して決して決しておまえを泣かせたりするもんかーッ!」
はやっぱり歴史に残る名言かと。
これもさすがベスト入りというべきか。こんなにもダークで美しく、それでいてラストが(伏せ)な物語。改めて読み返すと短編集の中では比較的長めなのね。だからこそ、青年の絶望と、月華が蓄えていく甘美な憂鬱の変遷がより細かくわかるのだろう。
今日の一滴="−−−−" (2006/06/20)
前々から興味のあったイタリアン「カシーナ・カナミッラ」@白金に行ってきた。
何処に興味があったって、他ならぬ如星愛用のトラットリア「プレチェネッラ」で昨年年初まで腕を振るっていた佐藤シェフの新たな店である、という一点に尽きる。しばらく休養するという話を聞いていたのだけど、昨年12月からこの店の新規オープンと共に、料理長として着任されてるとか。佐藤シェフといえばあの派手なパンツのイメージと共に(笑)、プレチェ時代には伝統的でありながらラディカル、ダイナミックな料理を堪能しまくってたわけで、こりゃーもう行かずにはいられまい。……しかし場所が白金台と完全に行動圏外。なかなか訪問するタイミングを掴めずにいたのだけど、相方の誕生日を機に襲撃である。
さてリストランテと聞いてたけど、それほど格式ばった感じはない。しかしプレチェぐらいの小さ目の広さながら、席数は半分ぐらいと潤沢な造り。更にフロアに2人付きっぱなしの上ソムリエさんまでスタンバイしており、硬くなりすぎずフレンドリーすぎずの心地よいサービスを提供してくれる。プレチェみたいなトラットリアのノリもすげー好きなんだけどね:)
肝心の料理の方は──ああ、佐藤シェフだ(笑)。突き出しに出たビーツの冷製スープの小気味よさ、ホワイトアスパラにホワイトアスパラ仕立てのソースを使う妙、文字通りの苦味のあるクレソンを練りこんだパスタ。ハーブを使ったサラダに甘海老を放り込む、ちょっと不思議なイタリアンの感覚。メインに堂々馬肉を据えてる辺りもかつてのプレチェを思わせる。また特に今回馬肉で感じたのだけど、料理でのチーズの使い方の巧さは本当に向こうのメシを思い出させる。
折角いいソムリエ氏がいるのにワインが飲めないのは相変わらず残念だけど、しかしグラッパもアクアヴィテも驚きの品揃えで、おまけにチーズもイタリア各地方のいいとこ取り。カチョカヴァッロやら、何か名前も聞いたことのないシチリアのチーズ(そしてメモしていないw)などを並べてグラッパを一杯。別にチーズはワインだけのモノではないのである(と、ストーン&ルジャズの薫陶を受けた如星は呟いておく)。
またこのグラッパ「Grappa di Turriga」がね。もう、イヤン(笑)。グラッパらしいグラッパを贅沢にした感じ、とでも言えばいいのか。如星が良く飲む樽香のついたものではなく、葡萄焼酎とでも言うべき荒々しさのグラッパの本流、それの系統を守ったまま、しかし上品に贅沢な味と香りになっているのだ。な……何を言ってるのかわからねーと思うが
(AA略)、本当にそんな矛盾した形容をつけるしかない絶品。こういう店で料理の写真を取る野暮天はなるべくしたくない如星だけど、これだけは記憶に留めるため&お客さんも少なくなってきてたのでお願いして撮らせていただいた。酒のことになると必死度があがるらしい。
ちなみに相方が頼んだのはアクアヴィテ(絞り粕ではなく葡萄そのものから作ったブランデー)で、色んな銘酒を寄り合わせて蒸留したものらしい。香りはグラッパ・マール系というより、何処かサザンカンフォートを思わせるような桃っぽい甘み。これまた絶品に旨い。
最後は当然ドルチェ、軽い盛り合わせにしてもらって締め。パティシエではなく自分でドルチェまで、という辺りも継承しているらしい。ラストにカフェを引っ掛け、本当に最初から最後までがっつりと堪能させていただいた。何かわざわざシェフにお見送りいただいて恐縮の限り(汗)。でもやっぱ客として覚えててくれたのは素直に嬉しいのよねー。
というわけで、イタリア各地の伝統郷土料理+ちょっとラディカルな遊び、という両面を持つ料理と程よいサービス、幅広い酒の揃えにフロマッジョもレベルの高い、とてもよい店でありました。しかし場所が場所なので如星らが常用するにはちと厳しいのが残念。今日は都内で宿泊だったのでよかったけど、やっぱりこの手の店は3時間4時間ゆっくり過ごすのが良いわけで、下手すると横浜方面には帰れなくなってしまうからね(苦笑)。
この日のカシーナ・カナミッラ、予約時に相方の誕生日で使う旨を伝えといたので、例によって相方側には「値段のないメニュー」が渡されたわけですよ。まぁそんな気にする程な高い店ではないのだけど、定番マナーという奴ですな。
しかし。相方が「値段が入っていないこと」に気づいたのはオーダーの直前でありました(笑)。「普段から値段見てないから違和感なかった」との仰せ。うーん流石、なんつーか楽しみ方に堂が入って来ましたね:)
一応彼女の名誉の為に言っておくと、確かに普段から我々揃って値段をほとんど見ないで頼むタイプではあります。あとほぼ全てに関してドンブリ割り勘なので毎度奢ってるちうわけでもないです。ハイ。
補足。これって別にブルジョワでもなんでもなく、その店の大体の価格帯は掴んでいるのだから、ちょっとやそっとの違いは気にせず食いたいものを食おうよ、というポリシーだ。寿司屋で時価握らせて目玉が飛び出る、なーんてことには普通はならないのである(そういう危険があったら普通は一言入れてもらえる)。同人誌即売会であと幾ら使えるかを一冊二冊単位で細かくリミットしたりしないっしょ?(例えがニッチ過ぎだが) 要は生活必需品じゃあないんで、大体使う金額をざっくり掴んだなら後は気にせず楽しもうという「ごくふつーの趣味」と同じ話なのだ。
この日のランチは実はClub NYX。
カナミッラの影に隠しておくにはもったいないくらい、この日のニュクスもイイ皿出ましたよ旦那。サフランライスのイカ飯が最高。ズッパ・ディ・ペスチェのようなトマトベースの魚介の旨みたっぷり。そしてサフランラヴ。しかしイカ飯。またこの日食ったエイヒレがまた旨い。コリコリした軟骨の食感と、何層ものハーブとソースの不思議な味わい。ああもうこの店も相変わらず、ホント掘り出し物である。最高。
今日の一滴="モルト:アードベッグ10年(アイラ)" (2006/06/24)
映画「カサノバ」を観てきた。実に笑えるコメディにして、往年のヴェネツィア映像てんこ盛りの極上映画である。つーか日本での売り方が果てしなく間違ってる気がする……。ちなみにフェリーニのイタリア映画の方ではないので念の為。
さて冒頭に書いたように、この映画は果てしなくコメディである。それもラブコメってよりはドタバタ劇で、監督や役者もパンフ内で、カサノヴァという題材を歴史的人物像に捉われずネタにした、と明言してたりする。ヒース・レジャー演じるカサノヴァがのっけから爆笑艶事シーンで幕を切り(膜かもしれん)、元首官邸の役人のコテコテ人物像やちょっと抜けた感じのドージェで笑いを誘う。その他の登場人物も、異端審問官やらヴェネツィア貴族の深層令嬢、メインヒロインたる没落貴族の女性学者、デヴのジェノヴァ商人まで、それぞれ表面上はテンプレ的な人物像で笑いを取りつつも、個性が激しく光ってて飽きさせない。人間味があり、確かに女性を惹きつけそうなカサノヴァは中でも名演である。……パンツ抱えて遁走しつつも、遁走中に別の(苦笑)女性から受け取った贈り物は決して落とさず逃げるって辺りが筋金入ってるしw
またテンプレ的という事はやたらリアリティがあるという意味でもあり、各種設定は映像表現とも合わせてヴェネツィアファンならニヤリとするモノが多い。尼僧院で堂々姦通してたり、没落貴族が金策に苦労してたり、フランチェスカが「文庫本」の出版に精を出してたり。最後の方で全員が馬車で爆走するシーンがあるのだが、根っからのヴェネツィア人に「こんな乗り物二度と乗るか!」と叫ばせてる辺り、かなり芸の細かい「リアリティ」が詰め込まれてるのが分かると思う。何というか、国力は既に傾きつつも、当時の一級国でありモードの最先端、というヴェネツィア人の自負が滲み出てくるようだ。うひー萌え。
そして肝心かなめの映像──嗚呼、ヴィーヴァ・ヴェネーツィア! 全編を通じて
というわけで、ヴェネツィアの雰囲気を贅沢てんこ盛りに使いながら、現代的ドタバタ劇シェイクスピア風アレンジ、といったコメディが流れていく名作であった。ドタバタと言いつつ締める所は締めてるし、オチに向かっての流れは実にスムーズで飽きさせない。……うん、どう間違っても「真実の愛を語る耽美官能ドラマ」ではない(苦笑)。つーか普通に大劇場で全国展開しても不思議じゃない大作だと思うのだけど、なんかLEONやらNIKITAみたいな少々痛い系の(失礼)雑誌が謎プロモーションをしつつ、名画座系で上映されてるのが現状らしい。……ヴェネツィアファンの皆様、決してそんな官能恋愛映画ではないので、上映が終わってしまう前に急ぎ劇場へ。歴史的背景を使ったコメディに興味がある方も是非。久々に「如星一押し」と明言できる映画でした。
今日の一滴="ハーブティ:SMNティサーナ「今日のブレンド」" (2006/06/25)