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如星的茶葉暮らし

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2009-05-03-日】

簡易版・同人誌の作り方実録編 第2回「イベントドリブン」

最近作成した本を題材にお届けしている「簡易版・同人誌の作り方実録編」前回は「着想を得て企画を漠然と認識する」ところ、そして「まずは出すイベントを考え予定を立てよう」というところまで書いた。「まず作る!」より先に「まず計画!」という辺りに違和感を覚える方もいるかもしれないが、ま、平凡人の意欲を考えるとこれが妥当なのである:)

以下目次。

2.計画(承前):イベントドリブン!

というわけで「イベント合わせ」のための「イベント選び」だが、あまり深く考えることは無い。「申込締切や実際のイベント日までの日数と、執筆期間+印刷期間の兼ね合いをとり、直近で面白そうなイベントに決める」と、一言で語ることも出来る。

実際には、当人の活動形態やら今回配布する本の位置づけ、ジャンル、申込済イベントとの兼ね合い等々さまざまな条件分岐を経て決定されているのだが、これを真面目に説明すると「簡易版」の枠を超えてしまう。もちろん、日頃はそんな複雑なことを考えずに条件分岐を無意識下でこなし、感覚的に3分で決めているのだが。てなわけで今回はあくまで、今回の如星がどう選んだかの説明で「その感覚」を掴んでもらえればありがたい:)

それだけでは身も蓋も無いので、軽く「作り手から見たイベント」について触れておこう。大体本をイベントで頒布しようとすれば、選択肢は大きく分けて2つ。

  1. 定期的に申し込んでいる中規模以上のオールジャンル即売会で出す
  2. 突発的に中小規模のオンリー即売会に申し込んで出す

実際にはこの組み合わせ、というパターンが多いと思う。「組み合わせ?」という点は後で説明するとして、とりあえずもう少し詳しく説明しよう。

オールジャンル即売会

分かりやすく言えばコミケやサンクリなど。最近ではComic1があったばかりかな。(余談だが、もはやコミティアは「一次創作縛りのオールジャンル」と言ってもいい気がする)

メリット
  • どんなジャンルの本でも突っ込める(オールジャンルと言っても、男性/女性向中心ぐらいの区別はあったりするので注意な!)

  • 多ジャンルが集まるので必然的に一定以上の規模になって定期開催・定番化しており、既存の読者さんも来やすいし、新規読者獲得も期待できる

デメリット
  • その規模ゆえに申込締切は数ヶ月から半年と早く、計画的に申し込まざるを得ない

  • 当然申込時に配置希望ジャンルを申請するので、主活動ジャンル(の予測)で申込済状態なのが常。突発ジャンル対応は出来ない。

    もちろん主ジャンル本と合わせて突発本を置くのはアリというか良くやるけど、ジャンルエリア違い本の頒布が届くのは各サークルについている既存読者層が中心となり、「対象原作のファン層」はあまり来てくれないのが実情。ちなみにエリア違いの本は、有名サークルで無い限り新規さんには本当に数出ないです。対象エリアの斜向かいですら(実体験)(涙)

    ただし「男性向け創作(エロの別名)」の場合、このジャンル違いデメリットがあまり発生しないので気にせず突っ込むことも可能……らしい。俺とは縁が無いけど!

オンリー系即売会

今回自分が申し込んだ「とらドラオンリー」等、特定作品やヤンデレ等の特定属性に特化したイベント。

メリット
  • 中小規模イベントが多く、申込締切が1-2ヶ月前程度と短いものが多い=突発的に動ける
    (ティアや東方系、クリーンヒット中の女性向けジャンルのような化物を除く)

  • そのジャンルを愛している濃い読者に届けられる。特に勢いのあるジャンルの場合、下手にオールジャンル系に出るよりも数の面でも多く出たりすることも(コミケクラスにゃあ勝てないが)

デメリット
  • 実はあまり無い。「ジャンルを問わないいつもの常連さん」に届きにくい……かも。

  • マイナージャンル、終息ジャンルだと一般参加者も少なく、サークル同士の同窓会状態になることも。これはこれで楽しいけど、「なるべく多くの読者に読んで欲しい!」という欲は満たせない。

さて、今回の如星が本を出そうと決めたのは3月末ごろ。もちろん夏コミには申込済だが、流石に8月=5ヵ月後合わせではあまりに機動力が無い。夏コミ以前で申込済or今から申込可能なオールジャンルイベントは無し。……となれば、残るはオンリーの可能性である。

一応、目算はあった。5月のGWは同人好きにとってはお馴染みのイベント・ウィークである。ばばっとぐぐって見れば、案の定GW開催のとらドラオンリーを発見。イベント日は5月6日、申込締切は……4月6日! まだいける。加えて

と、なかなか勢いもある模様。頒布してナンボの同人誌、これぐらいの勢いがある方が作る側としても気合が入る。

また先ほど「組み合わせ」という表現を使ったが、実際このオンリーイベント→その少し後にオールジャンル、という流れは、ある種理想的な即売会の並びでもある。まずオンリーで当然新刊をご披露、ジャンルを愛する人々に手渡すことができ、そのすぐ後に夏コミにて「コミケ初売り」として、この手の「定期開催大型イベント」にしか参加できないような、普段あまりオンリー等に足を運ばない人、地方在住の方々等にもフレッシュな本を直接手渡す機会が得られる。うむうむ、いいじゃないですか、これ。

Next Step

っと、だがここで決めてしまうのはまだ早い全プロセス予告編でも書いた次のステップ──「仕様決定」が、計画の一部として登場するのだ。5月6日までに本当に本が刷り上がるのか。それを、確認していこう。

……いや今回は他に選択肢もほとんど無いし、コピ本という奥義もあるので決定前提で進めたんだけどね。ま、説明のためということで一つ。

次回に続く!

(2009/05/03)

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【2009-05-08-金】

とらドラオンリーお疲れ様でした(大河かわいいです)

遅くなりましたが、先日6日のとらドラオンリーに参加された皆様、お疲れ様でした。また当「神慮の機械」にお立ち寄りくださった方々には心よりの感謝を。

いやはや、実に久しぶりのオンリー直参となりましたが、なかなか素敵な祭りのノリでしたね! 某サークルの影響か、まさかこの規模のイベントで男波を見るとは思いませんでしたが……(苦笑)。どう見ても扉一つ分≒人一人分しか抜け口の無いシャッターに男波が激突して金属音を響かせた時はかなりビビりましたねw BETAっつーか戦車級の群れです本当に(以下略)

──さておき、当スペースにも普段あまり「神慮の機械」にいらっしゃらない方々にお越しいただけたようで、本当にありがとうございました。とらドラで小説ってスペースは今回のオンリー内でも珍しい部類だったかと思いますが、キッチリ中を読み込んでから=中身で買っていってくださる方も結構いらっしゃり、書き手としては審判を潜り抜けてホッとする一幕も。コミケと違いほぼ常時スペースに居られましたので、こういった読者の方との直接の対話が多かったのも楽しかったですねー。

さて、今回の新刊はとらのあな様にて頒布開始いたしました。こちらのURLよりご利用ください。委託手配済です。販売開始時にまたトップページ等にてご連絡いたしますので、ご希望の方は更新情報を引き続きお待ちくださいませ。

では、次は一気に3ヵ月後の夏コミでお会いしましょう。この原稿調子を崩さず一気に乗り切りたいものです:)

(2009/05/08)

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【2009-05-09-土】

簡易版・同人誌の作り方実録編 第3回「デッドライン」

最近製作・頒布したとらドラ小説本を題材にお届けしている「簡易版・同人誌の作り方実録編」、第3回ではようやく「印刷所」が登場する。それでは、目次に続いてちゃきちゃき行ってみよー。

3.計画確定&仕様策定:印刷所から始まる恋

前回までのステップで、「合わせ」で初売りするイベントに目処が立った。当たり前だけど、本はそのイベント日までに刷り上がり、現地に持ち込める必要がある。となれば、自分の製作時間見込みはともかくとして、絶対的に自分の都合では動かせない時間について考えねばならない──つまり「印刷期間」だ。

というわけで、ここで印刷所に「そのイベント合わせの印刷締切日はいつか」を確認することになる。ま、これは印刷所さんサイトにある「仕様に合わせた締切日一覧」を見るだけの作業なのだけど。

そもそも印刷所って何処使えばいいのさ

とは言え、そもそも何処の同人印刷所を使えばいいのか──というのは最初にぶつかる問題かもしれない。

ま、その辺は深く掘っていくと2chに専門スレがあるぐらいの話になってしまうが、まず見積を取る段階程度であれば、とりあえずお手元のお好きな同人誌の奥付を見返してみよう。ほぼ必ず、その本を刷った印刷所名が入っているはずだ。これはいつの頃からか伝わる同人誌の慣習なのだが、読み手一辺倒だった頃には意味不明だったその表記が、今、貴方の前には救いの神として映っていると思う(笑)。そう、その手元の本こそ、その印刷所の「印刷サンプル」そのものなのである。

あとは、この後印刷所サイトで価格調査やセットメニューの有無(一定条件下で割安な料金体系が適用できるプラン)を確認していきながら考えていけばいい。正直、価格面では今や馬鹿みたいな差は出なくなって来ているので、好きな同人誌の品質を見極めて選ぶもよし、そして何より印刷所は「パートナー」なので、人の対応が良いところを自然と選んでいくようになると思う。

ここは大切なところなので繰り返そう。

印刷所は、金を払うと印刷本が出てくる「自販機」ではない。
印刷所は、貴方より遥かに豊富な印刷ノウハウを持つ、本作りの「パートナー」である。

この辺り、社会人の方のほうが理解しやすいかもしれない。印刷所と同人作家は「店とお客さん」の関係と言うより「取引先の業者」や「ビジネスパートナー」との関係に近いのだ。

付き合いが長く入稿仕様・印刷仕様も把握しきってる印刷所相手なら、入れときましたよろしくッ!の定型処理一つで終わらせる事もままあるが、例えばデジタル原稿の仕様等で疑問がある時、初めて試す仕様・製法の時など、とにかく「印刷物に落とすというプロ」と相談しながら決める方が、遥かに楽で、正確で、いい本が作成できる。逆に言えば、この手の話を振ったときの対応が悪い印刷所はさっさと見切りをつけてもいいくらいだ(が、如星はそんな印刷所に当たった試しが無い)

最近はシャイボーイ&ガールな貴方のために、見積から予約、印刷時の指定から納品まで、メールはおろかWebフォームクリッコだけで済ませることも可能な印刷所さんも出てきているので、一応ご安心を。ただ、やっぱ個人的にはそれは「最大の助言相手」を捨ててしまってる面は否めないし、また双方思い込みによるトラブルの芽を摘めずに事が進んでしまう傾向がある点は指摘しておこう。

精神論はその辺にして仕様上の注意点

精神論じゃなくて実利なのジャヨー……というのはさておき。まずは、自分が作ろうとしている本が「当てはまりそうなセット」を探し出そう。

例えば、もし貴方が如星と同じく小説本という茨の道を歩もうとしているなら──基本的に「小説本・文庫本パック」などの名前のセットがある印刷所を選ぼう。これは「本文が小説であることを前提に」文庫サイズや新書サイズ等の本が比較的安めに作れ、かつフルカラーの表紙かカバーがオプションでついている物が多い。

忘れられがちなのだが、普通の印刷価格体系では中身が小説だろうが漫画だろうが値段は一緒。必然的に頁数が漫画本より多くなる分、単価もストレートにそのまま上がる。小説本はただでさえ食いつきが悪いのに「高い」と思われてしまう罠が……。

おまけに、以前はA5以下のサイズの本は全てページ数辺りの料金が同一だった。過去にA5サイズの小説本が多かった理由はこれである(文字数詰め込んでページ減らして少しでも単価を下げるため)。最近は文庫サイズ・新書サイズにニーズが出てきたため、流石に別体系を用意してくれる印刷所さんが増えてきた。

「セット」や「パック」の名前で呼ばれている割引プランは、本の仕様のみならず、例えば早期入稿割引や特定イベント合わせ割などもあるので、手広く探してみよう。正直、セットメニューについてはWeb上の説明が錯綜していて分かりづらい印刷所も結構あり、この辺はメールなり電話なりで問い合わせた方が理解が早いことも。

もちろん、標準価格体系で印刷しても何の問題も無い(財布に相談だ)。締切はこの標準形が一番遅かったりもする。

いよいよ「締切」の確認

大抵の場合、印刷の納期には二種類、「標準納期」と「繁忙期納期」がある。

標準納期

その印刷所所定の標準納期。イベント日から14日前までに入稿すれば直接会場に納品しますよ、など。多くの場合、更にここから期間を前倒しすると「早期入稿割引」になったりする。以下に述べる繁忙期以外ならこれが理想。

ただし、中には「いかなる大型イベント時でも標準納期のみです」という剛の印刷所もある。惚れる。

繁忙期納期

夏冬コミケ前、大型イベント合わせ、GWのイベント集中シーズンに発生。

この時期はイベントの日付ごとに、各プランの締切日がセットされる場合がほとんど。当然標準納期より前倒し(=時間が掛かる)なので要チェック。また締切間際に泣きついて特急料金を積んでもどうにもならない場合が多い。いや普段だったらどうにかなるという意味ではないですじょ?|'-')

「応相談」「特急料金」

第三の道。まぁ、その、以下略。

ただし、特急料金については「3日本プラン」等、あらかじめ料金体系が存在するところもある。その場合も事前に予約が必要だったりするし、だったら「その事前」から原稿作っとけという気がしなくも無い。まぁ、最初からこれを発動しておくというのはかなり訓練されすぎた同人作家である。このページを読んでるような方はやめとけ

また、そもそも納期が明示されておらず標準時も全て応相談という印刷所もある(有名どころではPOPLS)。正直、受付さんとの腹の探り合いになるのでちょっとめんどくさい。

なお完全に余談だが、爆速特急本は臭いで分かる。印刷工程で最も省略できない時間は実は「乾燥」だったりするので、インクの臭いが芬々漂う本に出会ったら、印刷所に合掌し同人作家に鞭を入れておこうw

こうして締切日を確認すれば、逆算して自分が原稿執筆に掛けられる時間が判明する。また上の過程を踏めば、カラー表紙・カバーとモノクロ本文は二段構えで別締切になっているケースも多々ある、ということが分かるだろう。これは表紙を絵師さんに頼む字書きとしては重要なポイントになる

なお、これらの納期はほぼ全てイベント直搬入を前提にしている。印刷会社側で当日イベント会場までの搬入を手配するパターンだ。自宅に配送して手で持ち込む場合、その宅配分2-3日前に日程が前倒しになるので注意。この辺りは印刷所側・イベント側に、当該イベントで直接搬入を行っているか確認しておこう。自前の宅配便で持ち込む場合にせよ、まともなイベントなら、搬入要綱ぐらいは参加案内に記載しているはずである

……ちなみに部数については簡易版では語りきれない意思決定プロセスがあるので後で触れられたら触れるかも。また1000部を越えない限り締切に影響することは稀なので、俺ら中堅以下には無縁の話である。

そしてそれから

さて、具体的な目標が定まってきた。さあ後は原稿を書きまくるのみ───

……で基本的には正しいのだが、その前にもうちょっとだけ具体的に仕様を詰め、そして2つ3つ、色っぽくない話も必要になる。次回「金と人とリアルリアリティ」に御期待ください。続く

(2009/05/09)

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