VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
お待たせいたしました。TH2小説「夏色透かす桜の木陰と小さな貴婦人たち」シリーズのWeb再録公開、第2巻分が完成いたしました。オフラインでは分冊の都合上「夏から冬への回帰線」と名づけられていたものです。
今回公開分のメインキャラクターはずばり「柚原このみ」なわけですが、以前ゲーム本編のレビューでも書いた通り、キャラ萌えというより「好きなキャラ」なんですよね、彼女。二次創作的書き物をする上でキャラを掘り下げていくと、たまにこういった「惚れ込めるキャラ」に出くわします。現実にいても自分と波長が合うだろうなぁ、というか。
かつて君望で書いていたときなら「涼宮茜」、Fateの時は今ひとつ該当なし(アンリがだいぶそれに近いのですが)。二次創作はしてませんが、例えばマリみてで言うなら「島津由乃」とか。こうして並べるとなんとなくパターンが見えてくるのですが、機微を読むのが巧く、親しいけど無条件のベタつきはしないとか、一見わがままなようで思考はロジカル、一本線が通っている──等々。
正直、シナリオ面ではいい評価の出来なかったTH2本編から、こういうキャラの読み取りが生まれるのは珍しいとも言えます。このみはその意味でも例外的な、特異なキャラなんですよねぇ。ホント一見、べったべたの変な口調の幼馴染キャラに見えますが、彼女には明確にロジックがある。るーこの時にも書きましたが、ロジカルとは別に「理性的なキャラ」を指す言葉ではなく、思考と行動に一貫性があり、ロジカル部分を説明されれば全体が理解可能な存在と言えます。その正反対こそ如星が忌み嫌う「電波キャラ」、これは単に突飛で奇特な行動を取るキャラのことではなく、思考と行動に一貫性がなく、「何故そうするのか」が分からない故にイライラさせられるキャラですね。ヒロインと主人公の双方がこの罠に落ちている作品を、如星は「電波ミーツ電波」と呼んで最低の物語と見なしているわけですが……。
ま、それはさておき、本来ささら小説でありながら、このみの魅力を思うがままに盛り込んだ一作、お楽しみいただければ幸いです。また最終話分も、鋭意編集中です。今しばらくお待ちください。
先日に引き続きまして、さくさくと。TH2小説「夏色透かす桜の木陰と小さな貴婦人たち」シリーズのWeb再録公開、最終巻まで全てが完成いたしました。
「夏色透かす桜の木陰と小さな貴婦人たち (2)」(夏から冬への回帰線)
「夏色透かす桜の木陰と小さな貴婦人たち (3)」(葉桜に燈す夏への送り火)
公開に当たって言いたいことは3の末尾につけた後書きにあらかた書きましたので、そちらをご参照くださいませ。
ともあれ、いやー思いの他しんどかったです。日本語も散々直しましたし、あと特に3話目はルビを多用してたので、Web版でも同じようにルビを多用するか散々悩みました……一部はカタカナで開いたりもしましたが、大半はそのまま残っておりますが。日本語の直しは、主に主語や目的語が分かりにくかった部分の補強です。ただし冗長にならないよう気をつけましたが……この辺りは読者の皆様のご裁定を仰ぐのみです。しかし、いいリハビリにはなりました:)
さて、次は夏に向けての最終フェイズです。思いっきり修羅場モード確定中!
物書きの糞詰まり、この時期の同人作家(訳注:夏コミ締切間近)が罹病する、出そうで出ないが故の倦怠症状を一掃すべく、昨夜は同志ぶどう氏と飲みに出た。折しも濃密な湿気の落ちる夜、暑気払いも兼ねて涼しくカルヴァドスなど堪能することに。
酒の前に腹ごしらえと、新橋ガード脇の台湾小料理屋に顔を出す。料理屋といってもほとんど屋台、路上に並べた卓につき、普通の人ならビールでも呷るのだろうけど、醸造酒には弱い如星、グラスで紹興酒をやりながらピリ辛の胡瓜をガリガリと。続けて醤油煮込みの豚モツやら汁そばをわしわし食う──ホント、この猥雑さがいいんだよなー。しかも味はしっかり台湾風、香辛料もキッチリ聞いてるし。都会特有の温い風も多少は涼しくなってきて、路上ならではの楽しさを満喫する。
で、本番はカルヴァドス。銀座の外れにある「Bar Largo」へ。渋谷の本店は一二度試していたけど、銀座店は初めてということで経験者のぶどう氏に先導してもらう。氏も実は2年ぶり近くだったらしいけど、それでもキッチリ覚えられていたのは流石と言うべきか:)
いやー、このLargoがまた楽しかった。まずはやはり酒、カルヴァドスが豊富なバーということで、カルヴァドスだけでバー定番の3杯コースを組み立てられるのは素晴らしい。まずは熟成は浅いが香りが強めのモノをソーダ割りにしてリフレッシュ。中華のスパイスと脂を入れてきた旨を伝えると、キチンとソーダ割り向けにしてはボディの重い物を選んでくれたのが嬉しい。塩漬けオリーブをかじって塩気も補給しつつ、水分を身体に染み込ませる。
2杯目からはスタンダードに。ぶどう氏はフルボディの重いタイプ、如星は枯れたタイプを最後に置き、2杯目はそれを見据えたミドルタイプのカルヴァドスを選んでもらい、3杯目は予定通りのタイプで熟成の深いモノを、文字通り深々とゆっくり味わう。……こうやって「酒の流れ」をちゃんと考えてくれるのが「本物」のバーテンダーだよなぁ。
にしても、Tafiaのラムでも感じたけど、カルヴァドスという、普通の店なら1-2種置いていればいい方の酒が、壁を埋め尽くすほど幅広くあるという事実に改めて圧倒される。もちろん日本だって日本酒や焼酎を見れば、地元の酒ってのは基本的に呑みきれない程の幅を持っているのが当たり前なんだけど、その呑み尽くせない前途遼遠の嬉しさを、また一つ新しい世界で見られるのが楽しくてたまらない。
このLargoの楽しさ、酒に加えてもう一つ、バーテン氏との飲食談義がまた面白い。まだ早めの時間でお客さんが他にいなかったこともあり、互いに向け合った水から3人全員が「飲食趣味」の人間と分かり、このなかなか理解されない趣味の話で大いに盛り上がる。別に贅沢じゃない、君らのバイクやDVD-BOXと同じなんだ……という定番の話から、旨い酒を知らずに30、40になっちゃう人も増えたよなぁ……等々。「若い」人はおろか、10年選手の30代ですら、旨い酒の呑み方をまるで知らない人が増えてる訳で。しかし一方、飲み屋チェーンの酷いカクテルを酒だと思ってる人をキチンとしたバーに連れてきて、いわゆる定番カクテル──ジントニックやモスコミュールを飲ませると、必ず驚きの声を上げてくれたりもする。
ジントニックや、あるいは「水割り」等、シンプルなカクテルは実際旨く作るのは実に難しい(そうだ)。旨い水割りが作れるバーテンは一生食いっぱぐれないというぐらいで、単純ゆえに誤魔化しが効かず、逆に素人が適当に作ると驚くほど不味く作れてしまう酒でもある。むしろそういう酒屋では抜栓するだけの酒を飲むほうがいいんだけど、生の酒は「呑みづらい美味しくない物」という認識の方が先に勝っちゃうし、難しい。
こういうのって、本来そういう酒の呑み方を伝授する世代自体が呑み方を知らず、体育会系の強制飲み、くだを巻く愚痴飲みしか見せてこなかった結果じゃないかと思う。しかし一方で、最近は個人でblog等を書き、酒飲み情報を公開する人が増えてきた。そういうネットワークコミュニティ上で酒飲み同士が繋がり、またその繋がった結果を酒飲みでない人も読んで雰囲気を感じてくれたりして、いわゆる「ニッチ趣味の踊場としてのネット環境」という、酒以外でも起こっている趣味の普及が何とかその世代間伝達の代替になってくれるんじゃないか──最近日本酒飲みのコミュニティや焼酎飲みのコミュニティを見ていて感じたことでもあるんだけど、如星自身は、そんな希望的観測を持っている。だってあの味覚の砂漠たるアメリカ人ですら、酒だけは耐えられず旨い物を(バーボンなりエールなりワインなり)作り上げたぐらいで。この人類の叡智、錬金の御技は、ひとたび正しく触れれば人を虜にする力があると、信じている:)
程よく酔った身体、ぶどう氏のお勧めで明石焼きの店にふらりと寄って再度腹を満たし、そのままCovaへ移動して一杯のカッフェをバンコで呷る。こうして新橋から銀座をふらふら歩き、最後は丸の内を散歩して東京駅へ。物書きにして飲食趣味同士の夜の散歩、当初の欝気払いという目的は完璧に達せられ、明日からの原稿邁進を誓ったのでありました。が、がんばります。
今日の一滴="相変わらず名前を覚えていないカルヴァドス" (2008/07/17)