VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
夕食後、オタク踏み止まりを懸けて友人から薦められた萌えアニメなぞを眺めながら、口寂しさに茶ではなく酒を選択。一瞬思い悩んで選んだのは、焼酎めいたほのかな甘みがグラッパにも似る、ブラジルのサトウキビ蒸留酒であるカサーシャ。ベーリョ・バヘイロ・ゴールド(Velho Barreiro Gold)10年、雑多な庶民酒にしては長めの樽熟モノだ。
このカサーシャ(またの名をピンガ)は、旨い。カサーシャ自体は最近ブラジル肉メシ・シュラスコの店でカイ・ピリーニャの原酒として名前が知られ始めているが、そんなカサーシャの中でもこのゴールド10年は断じてカクテルなどにはしたくない、そのままグラッパのようにするりと飲んで旨い酒である。若いラムのような荒っぽさと、それでいて何故か素朴で丸い味わい。上でも書いたけど、この甘みはどちらかというと若くてフラワリーなグラッパに近い。そういえばトロワ・リヴィエールのホワイトラムを飲んだ時も、このバナナの葉のような、あるいは泡盛のような味わいがしたものだ。如星はあまり焼酎を飲みつけないけど芋の感じに近いし、そう、米麹である泡盛というのが日本の(琉球だけど)酒では一番近いかな。何より、このカサーシャは舌を焼かない。度数は40度あるのに口当たりが良く、かといって加水されたような感覚は一切無いのだ。樽熟なのに軽めの甘みを持つところといい、本当に不思議な酒である。
さて、こいつをグレンモーレンジのテイスティンググラスに注ぎ、つまみにイル・カランドリーノで貰ったドライフィグを齧りながらふにふにと映像観賞、そしてすいすいと酒を呑む。思うに、蒸留酒と言うのは酒好きであっても明らかに喉の滑りがいい日と悪い日があり、それは単純に体調に因るものではない。理由ははっきり言って分からないけど、今日は明らかに滑りのいい前者であり、そして喉の滑りがいい日は酔いも絶対に気持ちがいい。20数分掛けて1話分を見るたびに、1杯の酒を空けていく──ああ、これは本当に旨い。
あまりに旨いので別の酒を出してくる。こうなれば如星酒蔵の真打、アイラモルトのラガヴーリン16年の出番だ。喉の滑りの悪い日には勿体無いので決して出したくない取っておき、それでいて如星が外で飲むモルトの味わい評価基準にもなっているハウスモルトとも呼べる存在だ。フィグも尽きたので、つまみはいつぞや雑貨市で買っておいたウサギのパテ瓶詰めを開ける。この缶詰、瓶詰というのは手っ取り早い上に旨いという、つまみとしては最高の存在だ。もちろん、コストパフォーマンスはその分良くないが。
……ああ、これも旨い。つい先日旧友とLe Jazzで飲んでた時にも少々話に出たが、極少人数で(最大3だな)話が弾んでいる時の酒ってのは、本当に悪酔いしない。単に喋り倒していてペースが落ちるからか、それとも飲兵衛のヴェネツィア人が主張するように喋り倒すことで呼気からアルコールが抜けるのか、まぁホント楽しい酒っていい酔い方をする。他方、正直普段アニメなど見ない、時間拘束型の娯楽が本当に苦手な如星だが、こうしてのんびりと座って、小難しい主張も解釈もいらない萌え系なんぞを眺めながら飲るというのも、またなかなかに旨い酒なんだなと改めて思う。まぁ、多少退廃的でもあるな、とは思いつつ。
いや、見てるのはスカイガールズなんだが。呼気から酒精が抜けてるとかゆーな。
今日の一滴="カサーシャ:ベーリョ・バヘイロ・ゴールド10年" (2007/12/18)