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如星的茶葉暮らし

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【2007-12-01-土】

煮詰めよ青年、濃厚なマサラチャイの作り方

先日IRCで軽くチャイの作り方について駄弁ったら何ともご丁寧なお返しが来てしまったので、これは一つチャイの側も文章にまとめておかねば──と思い立ってから一週間。ようやく重い筆を上げて少々書き連ねてみる。

最初に断っておくと、これは美味しい紅茶の入れ方ではない。一般にチャイとか呼ばれるマサラチャイ=スパイス入りの煮出し紅茶は、はっきり言って紅茶葉の微妙な香りや旨みを楽しむためのモノではない。そうではなく、むしろ紅茶もスパイスの一種と割り切り、ミルクで煮込んだスパイスの風味を楽しむための飲み物、と捉えた方がいい。詳しくは後述するが、だからこの説明では「それでも一応紅茶の風味に気を使った入れ方」とは反することが書いてある。その辺を踏まえて参考にして欲しい。

基本スタンス:煮詰めよ兄弟

マサラチャイはスパイスの香りと濃厚なミルクの味わいを楽しむもの。……と言っても、濃厚で旨い牛乳を自宅に常備するのは難しい。今時スーパーでも売ってる低温殺菌牛乳なんかであるに越したことはないが、濃厚さの部分は単に煮詰めることで実現するのでご心配なく。ただし、噴かさぬよう、焦がさぬようにではあるけれど。ここが結構めんどいが、これがチャイに限らずインド風ミルク菓子の特徴なのだそうだ。

材料と道具:安茶葉とスパイス三昧

当然だがスパイスが要る。基本となるのはシナモン、カルダモン、生姜、クローブあたり。後は好みでローリエやナツメグ、刺激が欲しければ粒胡椒なんてのもアリ。できればパウダーではなくホールが理想だけど、まぁそうも言ってられないのは百も承知。でもシナモンぐらいはスティックを用意して欲しいな。あと生姜は日本人でも塊で常備してる貴重なスパイスなので是非利用しよう。練りショウガのチューブ……でもいいかも。使ったことないけど。ちなみに「チャイっぽさ」はカルダモンで一番出る。

スパイスの量はホント好み。俺はティーカップ4-5杯分に対してシナモンスティック2本ぐらい、

紅茶は、前述の理由により高級なのは不要。むしろ煮出しやすいよう細かく砕かれてる(=低グレード)なのがいい。BOPFとかCTCとか後ろについてる奴だ。味わいは強い方がいいので、セイロンならディンブラやウヴァ、インドならアッサムなんかがお勧め。逆にヌワラエリヤやダージリンは論外、中国紅茶も勿体無いので止めた方がいい。なおプーアルで作るという強烈な製法もあるらしいが未経験:)

牛乳は普通のでいい。本当は低温殺菌で、しかもノンホモとか最高だけど。あれはマジバターのお味でうまうま。

道具は適当なサイズの手鍋と、完成品を流し込むティーポット。あと茶漉しがあればOK。ただし手鍋は注ぎ口がない奴だと完成時に苦労するんだぜ。鍋底回りまくり。

では製作開始

  1. スパイスを炙る

    ホールで用意したスパイスのうち、シナモンは軽く砕いておく。カルダモンは刃を軽く入れとくのだが前歯でひと噛みでもOK、ただし中身を出しちまわないように。パウダーなら今は忘れる。クローブはホールでも挽かない。粒胡椒も轢かなくていい。

    んで、スパイスを空の手鍋に入れ、弱火で焦げない程度に軽く炙る。生姜は卸して入れるので入れない。このひと手間でシナモン等の香りがグッと引き立ってくるので、ここだけはすっ飛ばさずキチンとやるのがお勧め。1-2分程度でOK。

  2. 水を入れて煮始める

    スパイスを炙ってた手鍋に、最終量の半分ぐらいの水を入れる。後で水の量×1.3の牛乳も要るので用意しておく。0.3は煮詰めて蒸発する分と思いねえ(ホントにそれぐらい消える)。これは別に軽量カップとか使ってもいいけど、完成品を入れる使い慣れたティーポットで水を汲んで目分量にすりゃあOK。

    水を入れて火を強火にしたら、ここで生姜を卸して入れる。すぐ沸いてくるし蓋はしなくておk。

  3. 湯が沸いたら、紅茶を煮出す

    湯が沸いてきたら、茶葉を投入。カップ数+1さじ分の紅茶の基本は変わらず。ここから2-3分ほど煮立てて、茶葉を開かせる。ただ、あんまりグラグラ沸かしてしまうと湯が目減りしすぎるし、あと噴いて水面より上の鍋肌に茶葉が張り付き焦げ臭くなったりするので、くつくつ沸いてる程度に火力は抑えとく。

  4. 牛乳を投入、こっからが勝負

    いよいよ牛乳を投入。最初の水よりちょっと多いかなぐらい(俺は3割増)。あ、絶対に冷たい牛乳で。気を利かせてレンジで事前に温めたりはしないこと。牛乳臭さが出てしまうので。

    さて、大抵のチャイレシピは「こうして2-3分煮て、牛乳が沸騰したら火を止め、蓋をして蒸らして出来上がり☆」って書いてあり、茶葉の香りを生かすならそれはアリなのだが(和製英語ではあるが、それをロイヤルミルクティーと呼んでも区別してもいいかも)ここでは断固、もっと長時間煮込んでいく

    と言っても、もし牛乳の表面全面に泡がぶわーっと噴いてくるレベルまで持っていってしまうと、それは文字通り「噴きこぼれるまであと2秒」で大変危険な状態であり、しかも加熱しすぎて牛乳臭さが出てしまう最悪の状態である。それじゃあダメなのだ。

  5. 牛乳を吹かさぬよう焦がさぬよう煮詰める

    故に、まず第一に「絶対噴かさぬよう、鍋から目を離さない」こと。やばそうになったらすぐ火から遠ざける。

    そしてここでの目標「濃厚なマサラチャイ」を目指すため、むしろ沸くまで行かないよう極細火にし、時に必要であれば鍋を浮かせて火から離したりして、されど延々と鍋から湯気が立っているようにする。これにより、普通の牛乳も水分が飛んでどんどん濃厚になる。この時、火が強すぎると前述のようにすぐ噴いてしまうし、鍋肌に触れている部分の牛乳が焦げたりする。焦がしたら、もうその臭いは消えない。席に戻ってやり直し。よって慎重な加熱、ここがキモだ。

    ちなみに如星は牛乳を入れ、湯気が立ち始めてから5分以上、時には10分以上煮詰めてる。濃厚さの好みに応じて5分ぐらいから調節するといいかも。ただし、この辺はガス台の火力にもよるので塩梅を確かめながら。正直夏場なんかだと「一番火を細くしても強すぎ」ってパターンもあるので、これはマメに火から浮かせてやるしかない。……ま、夏にチャイ煮出すと暑いから滅多にやらないんだけど。

  6. 最後にしばし待つ

    十分煮出したな、と思ったら火を止め、蓋をして2分ほど蒸らす。……と言っても、この蒸らすって行為が味にどう影響するのかはイマイチ分からん。ご飯じゃないんだし。

    ただ、こうすると煮えくり返っていた茶葉やスパイスが底に沈み、注ぎやすくなるというメリットがある。

    その間に、完成品を注ぐポットを温めておく。やかんで湯を沸かして注いどいてもいいし。で、マサラチャイは断固砂糖を入れて飲む方が旨いのだが、如星は面倒なのでこの時点で温め終わったポットに砂糖を入れてしまう。ポットに砂糖入れるのが抵抗あるなら、最後にカップについでから普通に入れればいい。

  7. 茶漉しで漉しながらポットに注ぐ

    いちいち鍋からカップに注ぐのは大変なので、ティーポットに移し変えてしまう。この時、茶漉しを使って茶葉やスパイスも漉してしまおう。

    ここでこぼさないようにポット上の茶漉し目掛けて鍋を傾けるんだけど、どうしてもここでチャイが鍋底に回ってしまうという人──ずばり、これは腕より道具だ。箸を立てて沿わせるように注ぐとか、勢い良くとか色々言われるけど、ぶっちゃけ回りやすい鍋では何をやっても無駄。端的に言うと鍋が寸胴みたいに垂直円筒型だと、例え注ぎ口があっても回る。雪平鍋みたいに傾斜がついているか、あるいは縁だけが外側に反り返っているような鍋がお勧め。

以上、濃厚なチャイの作り方でした。あとはスパイスなんかで色々好みが出せるので試して欲しい。あとこっそり裏技として、クスミティの「カシミール・チャイ」を使えば、最初から結構スパイスが混ざってるし、クローブなんてホールで入ってるので下手に自前でブレンドするより美味しく入ってしまうことも(ただし入れ方は上の通り)。カシミール・チャイはDEAN & DELUCA辺りで買えるので面倒ならお試しあれ。一方でスパイス揃えるの楽しくね?とか思え始めたら俺の勝ち:)

最後に一つちと湿っぽい話をすると、この「ミルクを噴かさず焦がさず煮詰めよ」というのは、今は亡き某インド料理店の店長さんに教わった話だ。実はクルフィなんかもこうして作るらしい。マサラチャイを入れていると、時折ふと氏の事を思い出してしまう。スパイスの炙り方なんかは完全に自己流なので、その辺も教わっておけばよかったなぁ、なんて思いながら。

今日の一滴="−−−−" (2007/12/01)


 
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