VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
支倉凍砂「狼と香辛料(1)」読了。派手にメディアミックスなどで売るでもなく、それでいて一部読者に強く支持されていると聞いて好感を覚え1巻目を読んでみたのだけど(それは本当に面白い小説がよく持つ属性だ)、いやあこれは本当に面白い。久々に良質の当たりを引いた気分である。
中世風市民生活という舞台設定、当時の商売という物語構成、そして賢狼ホロというファンタジー&ラノベ要素がそれぞれ高いレベルで描かれ、しかもキチンに噛み合っているのは見事としか言いようが無い。一見「良くある中世風」に見えて、キリスト教風の宗教、土着信仰、農民と都市民の生活、商人の関わりなどなど、背景文化の書き込みが実に丁寧で厚みがあり、それを読んでいるだけでも面白い。商いを機軸とした物語作りもその延長線上にあり、珍しいプロットではあるけど作り込みの丁寧さで読ませてくれる。個人的にはヴェネツィア商売やら大航海時代等を通じて興味のあるところなので大いにツボを突いてくれた:)
これだけでも十分小説としては成立してると思うのだが、ここに美少女にして賢狼・神たるホロが入ってくる。これだけ他の要素が揃っていると、下手をすれば単なる媚び要素になってしまう可能性もあるのだが……この作品は断じて否。逆にホロなしでは成立し得ないトリックや救出劇で物語を引き立たせているし──何より、ええい、なんと魅力的なキャラなのだ、ホロ。いわゆる流行の萌えに堕さない、聡さと芯の通った性格と、そして愛らしいという表現がぴったりのキャラ造型。ここに永き時を生きるが故の哀しみまで加われば、これはもう陥落せずにはいられない(苦笑)。
ま、イラスト勝ち、イメージ勝ちかなと思う面が無いでもない。ホロのイメージがイラスト無しで伝わってくるか、先に見てしまった以上分からないし。ただ逆に言えば、巧く雰囲気にあったイラストが付いてるってことでもある。また全体として話作りといい文体といい、慎ましさを感じさせる小説なのだけど、イラストに限らず本のデザイン自体(本文字体、題字、目次の飾り等々)がそれを支援していて好印象。私的に本作りをしている同人屋としては、素直に巧いなぁと思ってしまう。
というわけで、全体としてバランスの取れた、非常に読ませる小説でした。適当すぎる中世ファンタジーに倦んでいる方、金貨銀貨の商い物語と聞いてドキドキしてしまう方、そして圧倒的に賢い少女に手玉に取られるのが好きな方(重要)、是非ともお勧め。如星自身、これは一気に2巻以降も読んでしまおうと既にぞね発注&到着済なのでした:)
今日の一滴="−−−−" (2007/07/13)
先日のTH2ささら小説の入稿に引き続き、夏のFate/Zero&hollow小説本のカバー部分を本日無事入稿いたしました。今回はFate回帰ということで、Fate時代に表紙をお願いしていました「白と黒の境界線」のるろお様にご寄稿いただきました。
コンテンダー! 40秒女! 血と硝煙と革グラブの七日間!(意味不明) ……いや、もうホントイメージ通りの血鉄の重さで今回は進行いたします。個人的には左手折返し部分のアイリスフィールにグッと来てますね。そこに込められた台詞は、心底如星の想いでもあります。
それにしても、今回はちょうど原稿入稿前後にZero3巻が出るんですよね。原作の領域はなるべく侵さないようにはしてますが、やはり苦しいというかドキドキしてしまう面も。実際には結末自体は確定事項なのでそれほど影響はないとは思うのですが……。ただ冷静に検討してみると、第四次聖杯戦争の「決着」ってどうついたか悩ましいんですよね。
セイバーとギル様は対決しているが、決着はついていない
対決の場に言峰はいない(セイバーは言峰がギルのマスターと知らぬまま終わる)
両者は「火の中で戦った」。つまり戦闘前もしくは戦闘中に不完全ながら聖杯が召還される
言峰は聖杯に触れて「この場から人を払え」と願い、住宅地に孔から火が溢れた。
つまり、聖杯起動の場と両者の対決の場はある程度離れている(セイバーが分からない程度)
切嗣は言峰の胸を撃ち抜いて倒す。その後でセイバーに聖杯破壊を命ずる。
ギル様は聖杯直下にいて溢れた泥を浴びまくる。言峰にまで流れが及び言峰復活。
この辺りまではFateで描かれている事実。
召還された聖杯の真下付近にいたのに、言峰には気づかなかったのかセイバー。どういう状況だろ。
その時切嗣は何処にいたのか。セイバーとは別行動中で、離れたところ(しかし聖杯の起動は可能なところ)にいた言峰を撃ったということか。
言峰聖杯から地獄を漏出→前後してセイバーギル戦始まる→切嗣、別の場所で言峰を発見し射殺→切嗣、泥の正体を悟る(そこまで飛び火してきたから?)→令呪により聖杯破壊を遠隔命令する──ってところか。なんか状況作成に少し無理があるような。もう少し整理が必要そう。
……ま、ともあれまだまだ原稿執筆は続きます。乞うご期待。
今日の一滴="−−−−" (2007/07/17)