VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2007-05-18-金】

TH2オルタ・スピンアウト:因果導体「プロト・ワン」

因果導体(公式より)

異なる並列世界間の因果の相互交換を媒介する存在。正確には並列世界というより、ある世界において光速でも到達不能な時空距離にある確率の雲同士で因果関係を交換してしまう存在だが、理解が面倒なので並列世界を繋ぐパイプと思う方が楽。

「……それでもイマイチ良く分かりませんね、久寿川博士」

「んー、まあ既に半ば頓挫した研究だしねぇ。大体が無茶というか、妄想に大真面目に賭けてみたって言うか……いや、それを言っちゃうとあの子達も似たようなものだけど、それにしたってESPの上を行くトンデモな話なのは確かよ。今となってはね」

「今となっては、ですか」

「ええ、そもそもね、因果導体が注目されたのはその存在が因と果を一見脈絡無く繋げられると考えられたからなの。並行世界ってメタファーで言うなら、例えばこの世界で『何か事故にあった』という因と、だいぶ離れた世界の『何も無かった』という果を接続して、『事故にあったのに何も無かった』という事象を作り出してしまうのよ」

「……本当に無茶苦茶な話ですねソレ。つまりアレですか、何かマズい作戦を無かったことにするとか、逆に勝手にBETAを消滅させるとか、そんな都合のいい因果律の改変を夢見てた、と?」

「まあそこまではどうだかね。あまりの『遠隔地』に存在する因果の接続には膨大なエネルギー量が必要になる──多分地球一つ消滅させる程度じゃ足りないぐらいで実用には程遠いから、多分初期段階では確率の雲を演算に使えるような無限密度の処理装置とか、お隣と通信して少しだけ都合のいい情報を引き寄せるとか、その程度が目標だったと思うけど。でも、最終目的は確かに貴女の話に近いわ。ある程度近場の因果を以って現行の決定された因果を覆す、あるいは近場の果を持ったままこっちの因に影響を与えるような──そんな存在が理論上あり得るか、というのが因果導体研究だったのよ」

「今となってはあり得ないと否定された、ってトコですか……まあ、そりゃそうでしょうねえ、そんな都合の──

「違うわ。確かに理論は未完のままだけど、因果導体と思われる個体なら現実に存在した、、、、、、、のよ。過去にたった一体、確定した因果情報を覆した記録を持つ個体──通称プロト・ワン、個体名称『月宮あゆ』って少女がね。因果導体研究は既に死亡した彼女の再現を目的としてスタートしたモノなのよ」

「え……あ、アレってソレなんですか!? ヨコハマの90番部隊みたいな都市伝説の類だと思ってましたけど!」

「ま、残念ながら事実よ。元々帝国のサンプルってぐらいで帝国の研究で、帝大の伊丹高等研究所に何年か保管されてたらしいけど……98年の大侵攻の時にBETAに急襲されちゃったわ。サンプルを運び出す間もなく灰燼に帰して、研究は大頓挫。一応オルタネイティブ計画で東京研究所側に残ってたある程度の成果は接収したんだけど、今のところ私、そんな夢物語に興味ないしね」

「もしかして香月博士がご執心なのって、その」

「そ。なんせオルタ4は因果導体研究を主体にしてるトンデモだからね、トンデモが現実だった唯一のサンプル資料は喉から手が出るほど欲しいんでしょうけど……そんなくだらないコトで、完成まであと一歩の私のプランを邪魔させはしないわ。だからこそ、貴女にも泥棒猫には十分注意しといて欲しいのよ」

──TH2オルタネイティヴ・挿入話より

本題原稿からの現実逃避が激しい件について。まあ、これは元々「久寿川博士の利己心に基づく研究成果の独占で、オルタ4の進捗は大幅に遅れ、ひいては人類の存亡に大きな影響を及ぼしてしまった」というネガティブな話を作ろうとしてた時の一環で生まれたネタです。ちなみに「あゆなのに伊丹/東京とはこれ如何に!」というツッコミはお控えください、ハイ。

今日の一滴="−−−−" (2007/05/18)

【2007-05-19-土】

明前龍井と中国茶におけるLife Basics

久しぶりに中華街は悟空茶荘へ。茶葉の補給が目的だったけど、休日にしては混んでなかったので二階で一杯飲んでいくことにした。中国商館風の作り、シェード越しにかすかに差す光と薄暗い店内。客層によっては少々騒がしいときもあるけど、座り心地のいいクッションと合わせて、ここは相変わらずのんびりと茶を楽しめるお気に入りの場所である。

今日は中国緑茶の明前、要は新茶、ダージリンのファーストフラッシュに当たる季節物が入っていたので、相方と二人で二種、龍井と龍井から一つ山を越えたところ(名前失念)のお茶を飲んでみた。龍井の方は釜炒りの中国緑茶らしさと抜けるような渋み、もう一つの方は一瞬抹茶にも思える青さと甘味があり、思いがけず季節の息吹を楽しめてしまった。

さて、こういう中国緑茶や白茶はグラスに直接茶葉を入れてお湯を注いで飲むことがある。飲みきらず(=注ぎきらず、だから急須を使わない)少しずつ湯を足していくタイプの飲み方だ。しばらくして茶葉が沈んでしまえば飲むのも楽なんだけど、最初のうちはまだ半数以上の茶葉が浮かんでいる状態。蓋碗ならずらした蓋の隙間から飲む手もあるが、オープングラスではそうもいかない。この場合上面にぎっしり浮いている茶葉を吹いて寄せて飲むのだが……。

ここでグラスを傾け、口をつけた辺りから水面を奥へと水平に薙ぐように吹いてしまうと、やってみれば分かると思うが水面中央で吹かれた茶葉が奥から外回りで口元に返ってきてしまう。水の流れを考えれば当然なのだが、結構この罠にはまっている人を見かけるので一つLife Basicsを。ここはグラスは手に取る程度の傾きにしておき、口を当てた直下の水面めがけて垂直に息を吹き降ろすのが正解だ。こうすると、吹かれた茶葉は戻ることなく反対側に寄るので、これが戻ってくる前にグラスを傾けてツーっと飲む。茶葉はまったく口に入らず幸せに楽しめるという寸法だ。お試しあれ:)

ちなみに今日の如星側戦利品は九曲紅梅。たまには中国紅茶も悪くない。

今日の一滴="グラッパ:マーサ・ヴェッキア@プレチェ" (2007/05/19)

【2007-05-20-日】

最近のグラッパ人生

けだるい日曜の夜。週末を翌日仕事のない状態と定義するならば、そいつは今朝目覚めた瞬間にとっくに終わっていたわけで。さりとて、ここ最近を見るに比較的充実していた二日間を華やかに締めるべく、取り出してきたのは秘蔵のグラッパ、フォルテート・デッラ・ルーヤ

いつぞやのイタリアフェアで仕入れた酒で、それほど馬鹿高いわけでもないんだけど、輸入量も多くないようであまり堂々と売っている姿を見ない。モノは貴腐ぶどうで作られており、香り高い華やかな甘さが特徴。といっても喉の奥にグラッパらしい辛さも感じられ、如星お気に入りの一杯となっているのである。……写真を見ての通り、もう無くなってしまうのが寂しいけどな!

そういえば、昨日の夜はプレチェ本店で極上の鳩などかっ食らってきたのだけど、その食後に飲んだのはマーサ・ヴェッキアというグラッパ。やはり樽熟はしていない透明なグラッパで、地味を非常に重視した、丁寧で個性的な造りをしているワイナリーなのだとか。そのグラッパは強烈で、グラッパらしさの体現のような、苛烈な焼酎めいた酒である。しかし葡萄の種らしさや、葡萄自体の甘い香りも強く、これまた極上のグラッパであった。

最近は樽香をつけたものより、葡萄本来の香りを生かしたクリアなグラッパを求めてる傾向が微妙にある気がする。ブランデーのような、モルトのような、渋い味わいを持つ樽熟グラッパはもちろん魅力的なのだけど、こういう元の葡萄が匂ってきそうなグラッパの魅力に今更ながら取り付かれたってことかもしれない:)

今日の一滴="グラッパ:フォルテート・デッラ・ルーヤ" (2007/05/20)


 
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