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如星的茶葉暮らし

■ 10月中旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2008-10-13-月】

アマルフィ旅行記(1):縁起

というわけで、10/02から1週間ほど、イタリアはアマルフィに遊んでいた。道すがら、余りに遠いのでローマで一泊、カプリ島で一泊しての旅である。ちなみに一応新婚旅行だったり。そもそも結婚式自体、三月以降相方も自分も休みが取れない日々が続くのを見込んで二月末に駆け込んだ代物なので、以来合わせて休める時期を狙っていたのである。

さて、そのアマルフィ。そもそも何処だそれは、と思った貴方、ご安心を。毎度エアもホテルも自前で手配してるけど、未踏の地ゆえに見積もりぐらい出させようとHISに立ち寄ってみたところ、開口一番「何処ですかそれは」が返ってきて絶望した(苦笑)。それでもプロかと!(なおJTBでは流石に通じた) ……ま、というぐらい普通の人にはトンと縁の無い場所なのだ。

しかし塩野七生の「海の都の物語」を読んでいれば、そして如星がヴェネツィアマニアである事を思い浮かべれば、ピンと来た方もいらっしゃるかもしれない。そう、このアマルフィは中世イタリアに勃興した四つの「海の共和国」の一つなのだ。ただ、繁栄も衰退も他の三つよりだいぶ早く、更に海際までせり出した山間の土地という最も不便な場所であったことが災いし、他都市とは違い共和国として滅んだ後には存在感を示せず、またジェノヴァのように近代化も出来ず、ヴェネツィアやピサのような強力な観光名所も持たない小さな町となっている。

とは言え、欧米人にはそれなりの知名度がある。「アマルフィ海岸」は現在リゾート地として名を馳せており、そっち方面での観光地化はかなり進んでいるのだ。近辺には五つ星のホテルが立ち並び(アマルフィよりも隣町のポジターノとかラヴェッロが多いようだ)、海外からの客も多く集めるアマルフィ・コースト。のんびりするには最適な場所であり、かつ如星好みの歴史の厚みもある。四共和国中最も行きにくい場所だが、それゆえ逆に新婚旅行という「機会」を使うにはいい場所かなと選んでみたのだ。

なおいわゆる南イタリアのガイドブックでは2ページで済まされるアマルフィだが、以前「旅」という女性誌にアマルフィの紹介記事が載ってたのが結構後押しにもなった。旅行に行くなら旨い飯屋の一つや二つは巡りたいところ、こういうマイナー都市の記事は素直にありがたかった:)

アマルフィ旅行記(2):旅程

Getting there is half the fun. 目的地が決まったところで、旅程の策定である。

ローマ→カプリ→アマルフィ

音に聞こえる僻地(?)たるアマルフィ。最寄の空港はナポリで、そっから延々海岸沿いの崖っぷちを走るバスで2-3時間、船が使えれば2時間程度。日本からナポリへの直行便は無いのでミラノやローマ他欧州のハブ空港経由になるのだが、この乗り継ぎの都合でどうしてもナポリ着が深夜になってしまう。初めての地の上に相方連れでナポリに深夜は御免だし、ナポリ空港〜中央駅間がバスしかなく所要時間が不安定とも聞いたので(待ってくれない飛行機が控えている帰りに困る)、むしろフライトでのナポリ入り案を放棄。ローマからES Italia AVにて1時間半との事、ローマに夜着いて一泊、翌朝に列車でナポリ入りすることにした。

「ナポリを見て死ね」とまで言わしめた風光明媚な港湾都市。だが、正直あまり興味が無く、観光はあっさりパスに決定。興味を持つほどナポリ史に詳しくないし、サルト・フィニートの土地と言えどスーツを仕立てる懐も時間も無いし:)

しかし折角あの辺まで行くんだからアマルフィ前に一箇所ぐらい浮気して行こう……となったときに、ポンペイと競って選ばれたのがかのカプリ島であった。青の洞窟云々よりも保存状態が非常に良いと言われるティベリウスの別荘跡に興味があったし、何よりカプリからアマルフィへ船便が出ている事が判ったのだ。ヴェネツィアと同じく、海の共和国は海から入ってナンボである。カプリはナポリ〜アマルフィ航路の真ん中に位置し、これならまさに「寄り道」として都合がいい。

かくて、ローマに一泊、カプリに一泊、そしてアマルフィに五泊の旅程が決定した。ちなみに帰りはアマルフィの更に先、サレルノから再びES Italia AVが出てると分かったので、それでローマに戻って帰国である。

アリタリア問題と機材ネタ

だが……元々アリタリアスキーで、イタリア行くならアリタリアと決めていた如星、チケットを押さえた直後に「アリタリアの再生処理、頓挫」のニュースが飛び込んでくる。二日遅いわッ! いや元々ヤバいとは知ってましたけどね……塩野七見じゃないが「危機も数年続けば常態」であり、イタリア流にのらりくらりと引き伸ばすんだろうとタカを括っていた矢先の「今度こそ」。発券処理もしちまったし、もうフライトまでアリタリアが生きている事だけを祈りつつニュースを追う日々が始まったのである……。

ま、それでもやっぱりイタリア行くならアリタリア便、それも非コードシェアのアリタリア機材を選ぶ。欧州便はエールフランスが一番メジャーだけど、どうもあの乗り継ぎハブ空港のCDG気に入らない。機内サービスもそこそこ、空港対応やオンラインサービスはやっぱりいいんだけどねぇ。イタリア行くのにイギリス経由もダルいし、スキポールが素敵なKLM(結局AFに買収されたけど)も良いのだが、直行便はやはり断然楽だしね。

加えて、アリタリアに限らずJAL機材のコードシェア便だと、帰国便に団体旅行客のブランドバガーが押し寄せるのが堪らない(苦笑)。でかい持ち込み品で頭上棚は埋めるわ修学旅行のノリで騒ぐわと、旅情が消えること請け合い。別にJALの日本人・日本語サービスに価値を見出さない如星としては、外国機材が一番なのだ。それにあのイタリア的放置サービスこそ、かの地に向かうには相応しいと思うのだが:)

なお結論から言うと、フライトは往復とも無事に飛行。労組の露骨なタイトローププレイが恐ろしすぎる、何処か余所の国営航空の未来が透けて見えないでもない、アリタリアの顛末であった:) ……いや最後に笑えて助かったけどね!

(2008/10/13)

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【2008-10-15-水】

二次創作の鑑・虚淵版ブラックラグーン

二次創作というのは、ある意味アウェイでの戦いだ。自分が作った訳ではない世界観に、自分が作った訳ではないキャラ。それらを如何に自家薬籠中に取り込み、かつ自分の作品性を見せるかが二次創作作家の永遠の課題なのだが──時折、むしろ世界観の側を自分のフィールドに投網の如く引き込み、それでいて原作読者に破綻を感じさせない痛快にして幸福な作品に出会える事がある。虚淵玄版ブラック・ラグーン小説「シェイターネ・バーディ」は、まさにその一冊だ。

宣言しよう、これは断じて「漫画作品のノベライズ」ではない。単に原作に無いエピソードだからというだけでなく、ブラックラグーンの世界観とキャラを以って虚淵流の物語を紡いだもの、すなわちこれこそは「二次創作小説」であるからだ。あーもう、二次創作作家としては羨ましさを感じるしかない作品だった。

いやねー、これは「Fate/Zero」の時にも似たようなことを感じたのだが、このブラクラでは原作との一体感がFateより遥かに高い。漢、銃器、中国拳法の三種の神器をFateに持ち込み、切嗣に綺礼、イスカンダルにトゥルー・ギル様(何)という「大人のキャラ」で奈須キャラをある意味蹴散らしに行ったのがFate/Zeroという素敵な作品だが、それはあくまで「持ち込んだ」面が(良い意味で)見える、Fateを尊重しつつ自分の書ける世界を描いた「アウェイ・ゲーム」での健闘ぶりだったと言える。

だがこの作品は違う。虚淵流を「持ち込んだ」気配など、アウェイ感など微塵も感じさせない。虚淵氏本人が「素敵なセットの中に、しかも使いたいアングルで撮影カメラが最初から配置してあった」とブラクラ世界を評したが、まったくその言葉通りの一体感がそこにある。しかも、単に元々虚淵氏と原作者・広江礼威氏の方向性が類似していたという幸運だけに頼らず、広江氏の領域とは少しだけカバーエリアの違う領域をキチンと持ち込んでいるのだから堪らない。

そういえばブラック・ラグーン原作を評したことは無かったけど、この原作漫画自体、実に稀有な代物だ。何が稀有って、恐らく作者の広江礼威氏がアメリカのストリート文化・大衆文化を高いレベルで理解、いや楽しんでいること。ロアナプラはタイの猥雑な暗黒街だが、その会話のノリはどちらかと言えばニューヨーク、ブロンクス辺りのソレだ。レヴィたちの会話自体、まるで元々英文の台詞を日本語に訳したかのように、英語として捉えても違和感が全然ない。むしろ英語の「原文」が浮かんでくるような台詞回しが、ブラクラで描かれる銃器と犯罪の世界の臭いにカチリとハマっているのだ。(余談だが、そうであるが故に、高品質だったアニメ版の最終話に日本編を持ち込んだのは失敗だった。レヴィの声優さんは最大限頑張ったんだろうけど、台詞自体があまりに自然に英語めいているので、発音面の不自然さが余計に目立って興を削いでしまったのだ。残念。)

広江氏が裏社会のストリートに近い面を得意とするならば、虚淵氏は裏社会の上方や軍にフィールドを持つ。実はストリートをキチンと描ける人材の方が数としては貴重だとは思うけど、虚淵氏の場合そこに得意の「漢の魅せ方」を加味して作品を展開する能力を持つため、結果として貴重度では絶大な二人が、類似の源流を持ちつつ、僅かに違う領域を担当して作品を作り上げるという──まぁ、もう何というか幸福な出会いとしか呼べないコラボが実現してるのだ、この作品では。

世界観のみならずストーリーとしても、軽さと悪ノリという二次創作の「楽」をラグーン商会の面々や張維新側で確保し、そしてシリアス面と、更に原作設定の深奥に切り込んでみせる二次創作の「妙」をバラライカで魅せてくれる、二次創作の鑑のような展開である。空挺部隊の描写はちょっと物足りないかな、という面が無いでもなかったが、古典的な戦友設定をバラライカの背景によく馴染ませ、原作の「双子」を思わせる──それでいて対応は対照的な──エンドに持ってくる。見事。……あとねぇ、「雅兄闊歩(ウォーキン・デュード)」はやり過ぎでしょう虚淵さん(笑)。 もうこの辺の悪ノリが楽しくて楽しくてしょうがないし。ま、難を言えば、シェンホアのキャラに少し違和感があったぐらいか。張と喋るときには広東語同士なので普通の麗人になる、という設定は巧かったんだけど、襲撃戦の辺りの描写が「らしくなかった」。相手が半分ギャグ存在なんだし、もう少し飄々と下手英語を撒いても良かったかと。

……おお、気がついたら結構な長文になってしまっていた。まぁそれぐらい、二次創作屋として実に楽しく、もちろんブラクラ原作ファンにも安心どころか極上の快楽を提供してくれる小説であった。「ノベライズ」というとネガティブな印象を持ってしまいがちだけど、それは露骨に作家に拠るモンだと痛感する一作であった。お勧め。

(2008/10/15)

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【2008-10-16-木】

アマルフィ旅行記(3):ローマ四時間弾丸教会ツアー計画

先日に引き続きアマルフィ旅行記を。アマルフィとは言え、本日の舞台は永遠の都・ローマ。12時間のフライトを終え19時空港着、20時にはローマ市街地入りし、予定通り一泊したのは旅程で書いたとおり。翌朝は10時半のES Italia AVでナポリへ向かうわけで、とても観光している暇など無いわけだ。

──しかし、ローマである。世界の首都、永遠の都、腐ってもローマである。朝寝して新幹線に乗るだけではあまりに虚しい。……この地には過去二回ほど訪れており、「移動勘」も無いわけではない。以前知人のために勝手知ったるヴェネツィアの一日滞在ツアーを組んだように、自分自身にも「10時で終わるローマピンポイント観光」を組めないかと考えてみた:) もちろんメジャーどころなど足を向けないのを前提に、狙いを自分の興味に絞って組まなければ単なる面白みの無いパックツアーになってしまうのだが。

そこで今回選んだのが、カトリック教会だ。以前の観光でも如星の興味はローマ帝国の首都としてのローマにあり、一方のキリスト教世界の首都としてのローマはヴァチカン・聖ピエトロ寺院以外はほとんど見ていない。そしてもう一つ重要な点──教会はその性質上、朝の7時から門戸を開いているのである。これならば、時差ぼけを逆手にとって6時起きし、バールで朝飯でも食らいつつ7時を待てば3時間は観光に費やせる! 早朝の散歩はイギリス人だけの特権ではないのである!(待て待てw)

荷物を拾ってすぐ列車に乗れるよう、ホテルはテルミニ駅正面に確保。地図と地下鉄ルートを睨みつつ、狙いを定めたのはローマ四大バジリカである。ヴァチカンの聖ピエトロ寺院は以前も足を運んでいるし、城壁外の聖パウロ大聖堂はちと遠い。駅に近く、雪の奇跡で知られる聖マリア・マッジョーレ大聖堂、そしてローマ元老院からガメてきたという青銅の中扉を持つと聞いてローマ趣味の面でも俄然興味の湧いてきた聖ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂。締めには四大バジリカではないが、かのミケランジェロが古代の浴場跡を生かして設計したという、これまたローマ欲をも満たしてくれる天使と殉教者の聖マリア聖堂がちょうど駅前にあるのでこれも選択。

一部効率的に地下鉄を使いつつ、途中ラテラーノ大聖堂からコロッセオまでが下り坂であるのを利用して散歩道に選び、余力があればドゥーチェのアホが遺跡のど真ん中をぶち抜いた大通りからフォロ・ロマーノでも眺め下ろしつつ帰還しようとの魂胆である。

無論この「アホ」とはかのムッソリーニ総領であらせられる。イタリアの総領はローマラヴのあまり遺跡を埋めてパレード通りを作るわ、ドイツの総統はローマラヴのあまりローマ式敬礼を採用してこれを永久封印してしまうわ、ローマファンに取ってはクソ迷惑以外の何者でもない痛いオタクどもである。

結局、この計画は図に当たりすぎ、早朝の人気の少ない荘厳な大聖堂二つを堪能しすぎてフォロ・ロマーノまでは手もとい足が回らなくなってしまったものの、今後のカプリやアマルフィでは摂取できない「大聖堂成分」をたっぷり吸収できた、慌しさなどまるで感じさせない素晴らしい朝の散歩となった:) いやー、考えてみるもんだねぇ。

個々の教会や街歩きについてはまた別途。

(2008/10/16)

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