MACHINA EX DEO
如星的茶葉暮らし

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【2002-11-11-月】

あまり見事に言語化されていたので、思わず引用。なるべく全文読破推奨。
つまり、私たちの知っている世界とは、かなりの割合で概念化された世界であり、それは正確に言語化できるものがかなりの割合で存在しているということを意味している。また、第二段階の感覚を最小限のズレで人に伝えるための文学的レトリックの方法論も、古今東西で考案されている。このようなレトリックを学んだり、語彙を増やすための努力したりもせずに、ただ言語不信を訴えてばかりいるような怠惰な表現者にはなりたくない。
if→itself 0:06 2002/11/11【意外と信頼できる】
「言葉にすると、本来伝えたかったこととズレてしまう」という話。
俺が普段「まずは言葉にしなきゃ伝わらない」と呟いている心が綺麗に整理されていて、一方で自分の論理的構築力に絶望もしたのだけど。……改めて、ちょいと俺も言語化してみよう。必ずしも上記引用と同じ事を言っているわけではない点、ご了承を。

さて、いわゆる「以心伝心」というのは便利と同時に結構胡散臭い伝達メディアだ。
以心伝心、ツーカーとまで行かずとも、そもそも俺たちは普段手間を省くために、一般言語にまで概念化せず抽象的なレイヤーで会話をすることは多い。仲間同士の内輪トークもそうだし、同じフィールドの人間は各分野の常識を言語化したりはしない。長いこと付き合っている友人や恋人同士は、相手の性格すら共有知とみなして省略する。お互い、僅かな言語が相手の知識野にある共有の知識の感覚を刺激して、意図した通りの情報が伝達されることを期待しているわけだ。これは一種の圧縮言語と言えるかもしれない──同じ圧縮/解凍方法を共有している相手とは、より手軽に高密度な会話=意思疎通が楽しめる、という寸法である。この圧縮アルゴリズムは仲間内で自然発生し、成長する。また圧縮度が高くなればなるほど「話しやすい」「気の置けない」相手となるのだろう。

しかし結局のところ、この圧縮言語が「非可逆圧縮」であることを忘れてはならないのだと思う。如何に高解像度と高圧縮度を同時に実現しても、JPEGの画像と現実の風景が等しい反応を生むわけではないように、やっぱり圧縮言語は、一応普遍的に相手に意図を伝える事を目的とした「普通の母国語」より精度が落ちることがあるのだ。おまけに危険なのは、所詮圧縮言語は(長い時間を掛けて育成されてきた普遍的な日本語に比べ)急造の言語だってコトを忘れ、時としてお互い微妙な、だが積み重なれば致命的なズレを無視したまま話を進めてしまう点にある。

「以心伝心」や「圧縮言語」が崩れる時は、酷くあっけない。本当に仲間・同志と呼べる以前の段階でズレた圧縮言語を乱発して自壊してゆく論外なコミュニティもあれば、恋人同士が積もり積もったズレが限界に来て初めて「あなたがこんな人だとは知らなかった」等と言い出したりもする。おまけに圧縮言語への依存が高ければ高いほど、ズレの期間が長ければ長いほど、その意思伝達関係が修復不能になりやすい皮肉な結果を生むというわけだ。

要するに、圧縮言語を過信するな、というコトである。「言葉にできない」「言葉じゃ伝わらない」ことを伝える前に、まずは意思伝達手段としてそれなりに鍛えられてきた言葉を使ってみようよ、というわけだ。また圧縮言語による会話がどんなに心地よくても、時折「素面に返った」日本語で相手の意図をさりげなく確認していくコトが、結果としてその圧縮言語コミュニティを長生きさせる秘訣のような気がする。最後の部分は俺の経験のみに基づく憶測だけど、ね。
Summary="−−−−" Physical:-- (2002/11/11)

【2002-11-12-火】

というわけで「神慮の機械」は冬コミ当選してました。「3日目西か-34b」です。
……ふーむ、今回PCゲームは西館隔離ですねぇ。葉鍵ビジターさんが回るには辛いかな? まぁ当方やれるだけの事はやってみます:)

最近このサイトがエロゲー二次創作小説サイトであることが小生本人の頭から抜けかけていたようですが(w)、ここらでキチンとサークルサイトらしいことを書いておきましょう。

現段階での新刊予定及びイベント告知

まず先に謝罪から。今月17日のアージュオンリー「Rumbling Pageant 2」にて、いつも通り「有栖山公園」様にて委託を行う予定でしたが、発行物が間に合いませんので委託を中止いたします。本来発行物として、白秋祭以来のWeb作品と現在進行していた短編を合わせたコピー本を出す予定でしたが、冬コミ当選を受けて該当作品を冬コミ向けに拡張することにしたためです。大変申し訳ありませんでした。尚如星本人は会場にいる可能性大ですんで、見つけたらぶん殴ってやってくださいませ。

そして、そうです。冬コミでは神慮の機械初のオフセ小説本を予定しています。
これに伴い、Web公開用としていた現行短編を紙用に書き直し、また以前のコピー誌から同一テーマの作品を加筆修正再録いたします。これでWebに載せる短編はさらに遠のいてしまいますが……ご了承くださいませ。

尚、神慮の機械では「紙」と「Web」では適した表現が異なる、と考えています。
よって話の大筋は変わりませんが双方共に細部の修正がされ、「紙」にした作品をWebに、Webの作品を紙にすることが多々あります。今回冬コミ発行作品も、一定時期(数ヶ月?)を置いてWeb公開することになるかと思います。買って頂く方に対して不公平ではないか、という意見もございますが、「紙の形で読む作品はまたスタンスが異なる」という発想でこのような対応をさせていただいております。ですので、「私はWebでいい」という方は、なにとぞWeb公開をお待ちくださいませ。

……とまぁ小難しいコトを書きましたが、恐らく神慮の機械「最初で最後の」君望オフセ小説本になるかと思いますんで、楽しんで作っております。一年間の活動記念も兼ねての発行ですし:) すでに赤字覚悟上等のこの一冊、今度ばかりは締め切りを落とさぬよう祈ってていただければ幸いです。

ちなみに伝統的にコミケ当落通知は、宛名が色ラベルで当選、白ラベルで落選と、開く前に明暗が分かるようになっていたのですが、今回から大判書類封筒に宛名窓抜き。あのラベルをみた瞬間の悲喜交々の伝統はなくなってしまったのか……と思っていたのですが。

どうやら窓抜き大封筒が当確、ラベル小封筒が落選らしいです。
ふっ、今度から封筒を裏返すまでもなく分かるということですか(;´Д`) 新たなる悲喜のヨカーン。
Summary="Driving Force." Physical:-- (2002/11/12)

【2002-11-15-金】

この一週間ロクに日記を書かずにラグナロク・オンラインに耽っていた如星ですお久しぶりです(苦笑)

いやー、20日午前3時でβテスト期間が終了してしまうので、せめてそれまでにLvを上げて、アチャ二次職であるハンターに転職したいなぁ、などと追い込みを掛けているからなんですが。 そもそも如星は「なかなか手をつけないが始めるとのめり込む」、ある種普遍的な人間の傾向を見事に体現した性格の持ち主でして、ハマれる対象ってのは、同時に現実が見えなくなることもある危険な存在なのです:)

加えてふと改めて感じましたが、ゲームってのは頭使わなくていいですね、ホント。 いやもちろん高度な判断力を求められるゲームは多いですし、オンラインRPGは会話等々あって思考停止するわけじゃないんですが……。
その種類を問わず、古今あらゆるゲームの面白さは「意思決定」にあるとよく言われます。何かの「障害」に対処し、目的に「到達」するための「意思決定」こそがゲームである、と。多分現実逃避に使われるゲームってのは、(他のゲームや人生そのものと比較して)気楽に提示される障害と、明確に下せる決定で構成されているんですな。だから「頭使わなくていい」と感じるんでしょうね。ま、テレビ見たり小説読んだりってのも気楽な現実逃避なんですが、ゲームの方は一応曲がりなりにも「意思決定」をしている訳で、だからこそ自分が何かをしている気になり、現実逃避を現実逃避と思わせずにのめり込ませる一因になっているのかもしれません。

日記も相当頭を使わなくてよい文章書きであることは事実です。(結論は以下略。)
Summary="−−−−" Physical:-- (2002/11/15)

【2002-11-17-日】

こみちあ@有明ビッグサイトに行ってきました。
あの場所に行くと妙に血が騒ぐという諸兄も多いことでしょう:) 冬の宴より1ヵ月半ほど早く、かの有明の地を視察してきたという具合ですな。折りしも有明で開催されていたキャラフェスへの、大きいお兄様方の長い長い行列に年末の光景を重ねながら、しかし当方本日はあくまでマターリと。

日記にも繰り返し書いているように、創作の力量レベルってなかなかのもの。しかし同時に買い手側も二次創作系よりもシビアな目で選んでいるようで、まず「相手をスペース前に立ち止まらせる」というボトムラインで数多のサークルがフィルタされてゆく。自作品への思い入れが感じられなかったり、惰性で出しているような所には足も向けないわけで、このシビアさがレベルの高さを生むんだろうなぁ。全部が全部高レベルとはもちろん言わないけど。

今回は冬コミ締め切り前とあって、主に小説本のレイアウトやデザインでよさげな物を買って帰る。小説本に限らず、ティアの本は内容もさることながら、本自体の設計・デザインという観点から非常に「盗める」ものが多いのだ。メモメモ。

今回もまた非常にレベルの高い創作作品を見つけてしまい、若干の劣等感と焦燥感を味わいながらも、この冬の「本を出す楽しみ」を味わい尽くしてやろうと決意を新たにするのでありました。うむ、やっぱりこのイベントは如星の性に合ってるのぅ。
Summary="−−−−" Physical:-- (2002/11/17)

【2002-11-18-月】

ウィリアム・H・マクニール「世界史」読了。
……圧倒される、とはこのことか。世界史の本というよりは、むしろ「歴史学概論」とでも呼ぶべき。あまりに巨大な歴史の流れを超高度から一気に俯瞰した、そんな衝撃を残す一冊であった。

この本はいわゆる「高校教科書的な世界史」、個々の国家や文化圏の歴史を申し訳程度に貼り合わせた書籍ではない。アメリカ人が書いているにも関わらず、西欧史の近代部分に突然中国・日本が現れるシロモノでもない。個々の細かな歴史的イベントに関しては「既知の物」として概略を述べるに留まり、中東文明、インド文明、中華文明、西欧文明の四つの相互干渉と発展、及びそれらの周縁部との関わりを軸に据え、世界の「文明の流れ(歴史の道標?)」を鮮やかに描き出している。四半世紀単位の「歴史」では到底語ることのできない、数千年の物語を一冊にまとめている辺りは驚異的とすら言える。

個々の歴史的イベントが描かれていないとはいえ、中東・インド方面の歴史的知識の乏しかった自分にとっては、目から鱗の記述がどっさりと。もちろん実際には「細部に神宿る」のだろうけど、西欧における中東という「巨人」の受け入れ方と、インドにおける「カースト」による受け入れ方の対比はスッキリと頭に入ってきたし、中東文明が何故近代に至って停滞し始めたか、なんてのは昨今知っておいて損はない。近代西欧文明の受け止め方、という方向で登場する日本の描き方も、個々のショーグネイトやサムライに拘ることなく、近代から第二次大戦、現代への流れを世界史という奔流の中に見事に位置付けている(第二次大戦中の太平洋側に関する具体的記述がわずか五行で終わっているが、読み終わってみれば世界史の概略をつかむにはそれで十分だということがよく分かる)。共産主義と民族自決という二大イデオロギーが同時期に発生した新しい概念だ、というのも指摘されてみればその通りで再び目から鱗が数十枚(「民族自決が永遠不変の正義だなんて何処の誰が決めたのかね?:p」)

この本、一通り読み解くにはある程度「歴史関係」に親しんでいる必要はあると思う。
しかし西欧史にしたって随分怪しい俺でも一読で得るところは多かったし、中学高校レベルの歴史的知識があれば、十分に読み込んでいけると思う。個人的には、是非こういう「歴史学的な一冊」を、高校辺りの歴史教科書に採用して欲しい。もちろんこの「世界史」の文章は平易であるとはいえ高校生向けではない(なんせ入門編とはいえ、オクスフォードの歴史学の教材らしいのだ)。だがこれを教材に使った授業はいくらでも組めるはずなのだ。個々のイベントを、一国とその周辺の歴史を追いかけているだけでは決して掴む事のできない歴史のダイナミズム、歴史小説読みが漠然と感じていた大きな流れを、学術的な正確さをもって記述しているこの一冊は、まさに二読三読と永久スルメ機関のように噛み締めつづけてゆける至高の一冊といえる。歴史というキーワードに少しでも興味があるならば、是非ともいつかは読んで欲しい。
さぁて、これでもうひとつお勧めの本、マクニール氏の別著「戦争の世界史―技術と軍隊と社会」を読まずにはいられなくなって来たな:) 7500円……ティアで諭吉消尽した身には少々辛いけど、気長にゲットすることにしよう。さらにもうひとつのお勧め本、「ヴェネツィア―東西ヨーロッパのかなめ」絶版なのは悲しいのぅ。神保町辺りを捜索することにするかなぁ……。
Summary="−−−−" Physical:-- (2002/11/18)

【2002-11-25-月】

原稿進行が煮詰まりすぎてきて日記も書けないでいる如星ですお久しぶりです。

書き下ろし小説が予想外に進まず苦労したり、再録作品に手を入れたりと、正直印刷所の料金割増特急プランに載った方がいいのではと思え始めてきました。捻れど捻れど練り込まれない新作ネタに絶望すら抱き始めてきました……が。

そんな時、過去に頂いた掲示板の書き込みや感想のメール。
これらを読み返すことが、驚くほど前を向く力になるものなんですね。それがある意味後ろ向きな、過去ばかり見る自慰的な行為だと分かってはいるのですが……しかし、自分の書く者が例え僅かでも他人の心の「何か」を刺激して、反応というものを引き出せたという事実は、やはり素直に受け止めたい喜びであり、同時に(例え紙のようであっても)自信にもなるのですよ。

プレッシャーを感じる程な評判ナシ。スランプと言う程な実力ナシ。

書きたい物を書きたいように。しかし、誰かの心に届くように。
さぁもうひと踏ん張り、気張って形にしていくことにしましょう。「原稿」に向けて自分を追い込んでいくのは実に久しぶりですがね、楽しんでいきますかな。……そもそも実際、楽しくてしょーがないのです:)

And once again, thanks all for your patience.
Summary="−−−−" Physical:-- (2002/11/25)
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