維如星・日々の雑文

MACHINA EX DEO

如星的日々の雑文

今日の雑文:バレンタインネタ。


「……ほれ、受け取れ」

「……まさかとは思って一応聞くが、これは何だ?」


じーーーっ。
あゆは何も言わず、真顔のまま小綺麗なラッピングを孝之に突き出している。大きく開いたその瞳で、黙って孝之を見据えていた。

(はあ……こうしてりゃ結構可愛いんだがなあ……)


そう孝之は軽く溜息をつくと、負けたとばかりに口を開いた。

「……つまりそういうこと、なんだな?」

「それ以外の何があるっていうのさ、この脳腐れのヘタレ虫」


憎まれ口の裏で照れているかと思いきや、意外とそうでもないあゆの表情。
こういうときのあゆに、孝之が勝てた試しはないのだった。

「えーと、サンキュ。ありがたく受け取っておくよ」と、孝之は続けた。


「……で、どういう風の吹き回しかぐらいは教えてもらえるんだろうな?『わーい、ありがとう大空寺さん!』なーんて喜ぶほど、俺とオマエは気持ち悪い付き合い方をしてないつもりなんだがな」


軽い驚きと若干の疑念、それに少々の照れを全て隠して。孝之がそう言うと、得たりとばかりにあゆが応じる。

「……ふ〜ん、やっぱりマトモな受け答えするじゃないのさ」

「はあ?」

「最近アンタの調子がいいから。……それが答えだって言ってるのよ」


さっと片手で髪を梳き流し、少し遠くを見て、あゆはいつもの不敵な笑みを浮かべる。

「この頃は前みたいに妙に沈んだりして生き腐れなくなったやん。これからもその調子であたしの相手をせいぜい頑張ること……。ふふっ、そういうことよ」


……むにっ。

「あっ! あにふんほよ〜〜!!」

「邪念がこもっちゃいるが、お心遣い、よぉっく分かった」


ぱちんっ。

「というわけでありがたく頂戴するよ。……ありがとな。」


孝之はそう言うと、手を振って歩き出す。

「……でもなぁお前、もう少し素直に渡しても罰は当たらんと思うぞ?」


その台詞が、強気の笑みで固めたあゆの表情を、ついに赤くほころばせる。

「う、う、うがあああっ! オマエなんて、猫のうんこ踏めっ!」


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