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あれから。
私は何度もあの日のことを思い出した。何度もあの日のことを後悔した。
……鳴海さんに来て欲しい、と思っただけの他愛もないイタズラ。
それが、どんなに鳴海さんがお姉ちゃんを好きか試したみたいになっちゃって。
「それともお兄ちゃん、お姉ちゃんが事故とかに遭ってた方がよかったわけ?」
なんてコドモだったんだろう。
私があんなことを言ったから。
(……鳴海さんとお姉ちゃんが二人で笑ってたことが。あんなにも当たり前だった時間が、私にとってこんなに大切だったなんて……)
そんなはずがない、関係ない、って思おうとしてもダメだった。
(……私の大切なお兄ちゃんが壊れちゃいそうなんだよ……鳴海さんは、お兄ちゃんはこんなにお姉ちゃんのこと好きなんだから……だから早く目を覚まして……)
私があんなことを言ったから。私がお兄ちゃんを試したから。
───今、こうして鳴海さんは笑っている。その笑いに応える姉さんが、隣にいる。私が、心の底から笑顔を見せられる二人が、そこにいる。
あの時、鳴海さんといる水月先輩を見て。どうして自分が隣に行かなかったんだろう、って後悔して。先輩を、鳴海さんを憎みすらして。心の痛みを、姉さんを見続けることで誤魔化そうとして。
鳴海さんに、酷いこともたくさん言ってしまった。
そして、二人に訪れたのと同じぐらいの幸せが、私にも訪れて。
どんなに都合が良いと言われてもいい、きっと、その都合のよさ、自分の汚さは、自分の隣に誰かが現れたとき感じることになるだろう、から。私が憎み、そして私が傷つけた人が、結局は幸せをくれたんだ。
あ〜あ、やっぱり私、鳴海さんのこと好きだったんだろうな〜。
……それは、ちゃんとした恋に変わる前に、ゆっくりとかすれてくれた。鳴海さんと、姉さんの二人の笑顔のおかげで。そのことで少しほっとして、そして少し、悲しくなったけど。
悲しみと憎しみで、私の心から取り去られた幸せ。
3年間、ずっと欲しかった幸せが、そこにある。
でもこの幸せは、ただ待っているだけで手に入ったものでも、3年前から持ってきたものでもない。
今、自分たちの手で新しく作っていく幸せ。
後ろばかり見て、願っているだけでは幸せは得られないことを、姉さんと鳴海さんが教えてくれたんだ。
さ、今度は私の番、かなっ。
姉さん、いつまでもお幸せに。
鳴海さん、本当に、ありがとう。私の、初恋の人。
いつかその時まで、今は、今に素直でいたい───